リスクリバーサル修正トレード

2023年5月21日

リスクリバーサルは同デルタのコールとプットを反対売買する、と説明される。
リスクリバーサルの基本的な考え方、理論的根拠は リスクリバーサルの理論的含意について に詳しい。
要するに割安なオプションを買って割高なオプションを売るわけだが、当然売りのリスクはある。
しかし、オプションの戦略にありがちなそういったデメリット部分や出口戦略についての解説は見かけない。
リスクリバーサル取引は見方を変えればIVのサヤを抜くものなので、リスクリバーサルなどという呼び名を知らなくてもオプショントレーダーなら誰でも知っている。
しかし、それで儲けられるかはまた別問題である。
ほぼほぼプットのIVのほうがコールよりも高いので必然的にコール買いのプット売りとなる。
上記リンク先の説明には相場観によりそうなる、と説明があるが必ずしも先行き下落すると思う人間が多いからプットが高くなるわけではないことは説明不要だろう。

プットを売った場合のリスクヘッジとしていくつか考えられる。
ミニ先を売ってヘッジする
プットの買いを組み合わせる
などであるが、リスクリバーサル取引のキモはIVのサヤを抜くということになるが、仮にSQまで持ち越すことを考えると、コールの買いはインしなければ紙屑となるし、プットの売りはインしなければよい。少々乱暴に言えばあまりIVというのは関係ないことになる。サヤを抜くという観点からすれば別にSQまで持ち越す必要もなくサヤが開けば決済してもよい(サヤが開いても必ずしも利益にならない場合もある)

リスクリバーサル、要するにIVのサヤを取ろうとする取引は一見するとコールの買いのセータをプット売りで補充する取引なので損しづらく儲けそうに見えるがそうではない。
リスクリバーサルとブラックショールズ式を考えた時、
正規分布していない
IVが権利行使価格によって違う
という点が少なくとも日経平均、とそのオプションには言える。
また、日経平均の特性=値動きなどから、価格がいくらになるかは読めなくとも一定の傾向などがみてとれる。
ここで傾向というのはボラティリティや価格の値幅などの傾向である。
例えばボラは一時的にはあるが、恒常的に50%などという数値になることはない。
また、1日で日経平均が半値になる、などと言う事もない。
他方、正規分布していないとは言え、長期的に見ると正規分布曲線にかなり似ている分布となる。
このような事を考慮していくと、リスクリバーサル取引をそのままヘッジなしで日経225オプションに当てはめるのは得策ではないことが分かってくる。

とは言え、リスクリバーサルの考え方は大いに参考にできる。結局、今日経平均の特性などと言っていることは見方としてはリスクリバーサルの見方と同じことである。
そうすると、確かに安いコールを買い高いプットを売るのは優位性があるのは間違いないが、リスクも大きい。
従ってやはりヘッジは必要であろう。もっともヘッジをすることによってリターンがどう変化するのか?リスクは軽減したとしてもリターンがなければ意味はない。

そもそも、オプション価格はブラックショールズ式により算出されているが、ブラックショールズ式は対象原資産が正規分布することを前提としている。
IVが権利行使価格によって違うとは言え、基本はこれを前提として価格づけされていることには違いない。
つまり、約7割くらいの期間で動きの少ない±1σの期間となる。リスクリバーサル取引だと0.25⊿のコールを買うことになるが、確率的には4回に1回しかインしない。
7割以上の期間ではインしないことになる。プットも同じことである。
オプションの取引は長くてもせいぜい1か月程度であり、この期間でみれば日経平均の騰落率は正規分布から大きく外れる事も多い。そうすると、正規分布を前提とし、かつIVが一定であると前提とするような価格付けをされたオプションは実際は適正価格ではないということになる。

リスクリバーサルの理論的根拠と相通ずるものであるが、リスクリバーサル取引は言わばIVのサヤを抜こうとするものであるがリスクも高い取引と言わざるを得ない。
そこで、オプションの反対売買をせずコールとプットを両方買う所謂ロングストラングルを基本とすることを考える。
通常、ロングストラングルなどのオプション戦略はSQ時までポジションをそのままにしておくが、そうするとこの戦略は7割前後の期間で負けとなってしまう。
相場は常に上下動を繰り返し、正規分布していないとしてもそれに近い動きをすることは分かっている。
相場が上昇した時にはプットを損切りして上にロールし、相場が下落した時にはコールを下にロールする。
リスクリバーサル取引と同様ATMから同じ⊿分離れた位置で当初ポジションを構築し、相場が上昇した場合はプットの⊿が減少するので上にロールするが、この時点でコールは⊿が増大しているが動かさない。
⊿ヘッジの場合は⊿をフラットにするが、⊿がフラットなのは最初くらいである。⊿自体はあまり重要ではないので価格ベースで500円上昇したらロールなどでもあまり変わらない。
重要なのは一定の変動でロールをやめるという点である。これは日経平均の特性からくるもので、一定の変動率以上だとその位置から大きく反転するということが少なくとも1か月という短期では起きにくいという点と、ロールをし続けても利益になりづらいからである。

リスクリバーサル取引はIVのサヤを抜くものと言えるが、リスクリバーサル修正取引はIVのサヤではなく、変動率のサヤ、あるいはγのサヤを抜く取引と言えるかもしれない。
従って、ロングストラングルを基本とするのではなく、リスクリバーサル取引のようにコール買いプット売りを基本としつつ、ミニ先の売りでプット売りのヘッジをするとか、プットの買いを併用したり、或いは外側のコールを売ったりするなど様々なアレンジをして収益率を改善することができる。と言うより、それがむしろ基本となる。
なぜなら、長期間オプションを買い続け、売り続けても結果として正規分布に近くなると儲けも損もトントンに近くなっていくからである。
リスクリバーサル修正取引は要するに
ある程度の相場上昇でそこそこ儲け
ある程度の相場下落でそこそこ儲け
あまり動かない相場で少し損する
大きく上昇した時にある程度大きく儲け
大きく下落した時にある程度大きく儲け
という事になる。
もしこれが正規分布すると
7割弱の期間で少し損することを繰り返し
3割弱の期間でそこそこ儲け
極稀にある程度儲ける

なぜこれで利益があがるのか ブラックショールズ式の帰結からは儲けもなければ損失もないが
例えば日経平均が5%上昇しコールがインした場合インした金額はリターンとなり、そこからオプション購入費用などのコストを支払いそれがトータル損益となるが
仮にATMから3%離れたコールだった場合、インした場合のリターンは2%であり、これからコストがかかる。逆に5%下落した場合はリターンはゼロであり、コストだけがかかる。
日経平均が正規分布をしていると仮定すると、上昇も下落も同じなのでコールの買いの場合は実際はいくら下がろうが損失が増えるわけではない。もっともオプション価格はそれも込みの価格付けなのでいずれにしろ儲けもなければ損失もないが、リスクリバーサル修正取引はこれにプットの買いが加わり、かつ相場の上昇に追随してロールする。
そうすると、コストにプット購入費用までかかってくるが、このプット購入もプット単体で長い目でみると儲けもなければ損失もない。

とは言え、日経平均は正規分布はしていない。特に1か月という期間でみるとよりそのズレは大きい。
また、限月間のボラティリティを目安にリスクリバーサルのポジションを構築せずに、その半分ほどを目安に構築すると、インをする割合が倍増する。
もっとも、数年以上の長期間でみれば正規分布にかなり近づくわけでオプション価格もそれで価格付けされているためいずれにせよ買い続けてもトータル損益ゼロに近づいていく。
しかし、これはあくまで限月間の終わりの価格だけの話であり、1か月の間での上下動はカウントされていない。
仮に、相場が5%上昇した後に10%下落した場合を考えると最終的には5%の下落である。
しかし、リスクリバーサル修正取引は相場が5%上昇した場合に端的にプットを上に5%ロールすることになり、結果的にプットは日経平均5%分インしていることになる。
とは言え、ロールし続けると長期的にみるとこれもトータルリターンゼロに収束していく。

このように見てくるとリスクリバーサル取引はIVのサヤを抜こうとするものであるが、実際はコールの買いコストをプットの売りで相殺するものであるということができ、相場が動かない、或いは下落するなど、コールがインしない場合のコストをなくそうとするものであることがわかる。
そう考えると長期的にみればこの取引はコストを相殺した部分が利益となる帰結となる。言い換えればプットの売りで得たプレミアムが利益の源泉なのであり、もしもIVが現実のボラティリティと同じであれば結果的に利益を得ることはできない。従ってコールのIVがそれより低ければその分が利益となる。

リスクリバーサル修正取引も結局は同じ原理となり、結論的に言えば低いIVを買い続ければ長期的にみて利益となる。
しかし、恒常的に割安だとみられるコールを買い続けても概ね半分以上の期間で損失となり、かつATMではなく離れた位置のコールなのでさらに勝率は低くなる。
5割の期間で相場は下落すると考えるとその時にある程度の利益が出せれば、コール買いの損失が補填されるかあるいはトータルでも利益となり、勝率は上がることになる。
ここで重要なのはコールとプットのIV差というよりも日経平均の長期的なボラティリティと当該オプションのIVを比較するということであり、もしもコールのIVが低くてもプットのIVが日経平均のボラより高ければそれを買い続ければ損失となるので売り続けたほうがいいということになる。
また、リスクリバーサル修正取引でわざわざ相場の上下動に追随するようにロールさせるのは利益を増大させるというよりは勝率を上げるという意味合が強い。
勝率が上がったからと言ってトータルでのリターンが必然的に増えるものではないことは、ロールし続けることによってコストも増大するからに他ならない。
従って、ロールすることは必須ではないとも言える。

リスクリバーサル取引の本質と、日経平均の特性、及び取引期間を各限月間で考えた場合は必ずしもコールとプットで反対売買をする必要はないことになる。

ブラックショールズ式の帰結とリスクリバーサル修正
オプション価格がBS式によって適正価格だとするならばオプションは買い続けても売り続けても利益もなければ損失もない。
これは限月毎のリターンと当該オプション価格の関係性が相関しているからである。
ここで、オプションを途中で買い直したり売り直したりする場合はどうなるだろうか?
仮に内側に買い直す場合はインする確率が高まったことになり、元々買っていたオプションに比べてインする場合もあるはずだ。
そうすると、当初買っていたオプションではリターンが全くなかったのにリターンが発生する。もちろん、購入コストは増大していることもあるだろうが、期間がある程度経過している場合は減価している場合もありコストはそれほどアップしない場合もある。
いずれにせよ、当初買ったオプションの権利行使価格を基準とする本来リターンのないものにリターンが発生したことに違いはない。勿論インするかしないかは分からないし、購入費用が多くなってしまい、結果としてトータルで損失となる可能性もある。
コールを100円で買い続けたらトータルで損益ゼロとなる場合に当該コールを50円で損切りし100円で下方向に買い直したとする。
そうするとトータルコストは150円となるが、仮にインする確率が10%増大したらどうなるか。買い直したコールの位置が当初の位置より500円下だった場合は500円のリターンの確率が10%増えたということになる。
100回の試行で10回しかインする回数は増えないが500円×1000×10回で500万のリターンの増大が見込める。その反面コストの増大は50円×1000×100回で500万となる。
従って、買い直す場合はインした場合の増大リターンとコストの増大を比較して優位性があるかどうかを見極める必要がある。

RXM指数 リスクリバーサル指数

https://www.cboe.com/us/indices/dashboard/rxm/#
δ0.25のコールを買い、プットを売る。プットを売ったキャッシュで1か月の国債を購入するようである。

PPUT指数 プロテクションプット指数
https://www.cboe.com/us/indices/dashboard/pput/
S&P500のロング5%アウトのプットのロングで組成。

5年の相対パフォーマンス

1年の相対パフォーマンス

2023年初来

パーセンテージでの比較の為どこを起点にするかによって違いがでるが、各指数のリターンに極端な差が出ていないのが分かる。

リスクリバーサル戦略においてはコール買いのプット売りなので言わば先物を買っているのと同じような状況である。
プロテクションプットは現物或いは先物でも同じだが、S&P500のパフォーマンスと同等になり、そこにプットロングのリターンが加わるだけである。
いずれにしても原資産とのパフォーマンスがあまり変わらないということは要するにプットのロングであろうがショートであろうがコールのロングであろうがショートであろうがそれを提起的に行い続けても長期的にみると目立ったパフォーマンスの差がない、ということの証左となる。
言い換えればオプションの価格付けがブラックショールズ式によりある程度機能しているということに他ならない。

ただ、プロテクションプットは原資産を購入しているのでそのパフォーマンスとあまり変わらないというのであればプットのロングの意味は長い意味ではないに等しい。局所的にみれば大きく下落した場合の補填にはなるがほとんどの期間で紙屑となるので、その点をどう考えるのかは人によるだろう。
その点、リスクリバーサルは原資産は保有せず、原資産と同じようなパフォーマンスが期待できるということになる。とは言え、プットをショートするので結局原資産を持っているリスクと同じかあるいはそれ以上のリスクを持っていると考えられなくもない。現物の日経平均を購入するには2000万以上必要なので確かに資金効率はいいものの、それをメリットと考えるなら先物を保有すればいいことになる。プット0.25のδであっても先物ラージ1枚売っているのと変わらない。

大数の法則と中心極限定理と標準偏差

一時的にIVが高かったり低かったりしても長期的にみると平均値、正規分布に近くなっていくため結果的には買い続けても売り続けても儲からないと言える。しかし、そうするとリスクリバーサル戦略はリターンが±0に収束していくことになるが、そうならないのは恒常的にコールが安く、プットが割高になっているからであり、コールのIVが低く、プットのIVが高いからに他ならない。
リスクリバーサル戦略は言わばIVのサヤ、裁定取引をしていると言っていいかもしれない。

RXM指数の検証

パーセンテージリターンでみる2020年

2020年 RXM指数はS&P500に比べて13%以上劣後している

0.0066 0.14282 -0.13622
RXM SP500

コロナショック前後を比較するとあまり変わらない

2/25~4/30

-0.16383 -0.15071
RXM SP500

5/1~12/31

0.145247 0.246556
RXM SP500

コロナショック後の急激な戻り上昇相場でRXMは劣後した事になる。一般論として言えばコール買いのプット売りなので相場が上昇すれば利益になる。
利益は出ているもののパフォーマンスは原資産より劣後するのはなぜか。
そもそも論として原資産と同じパフォーマンスが出る事が前提とはなっていない事があげられる。

年初と年末の単純比較

差し引きでみるとパーセンテージリターンとあまり変わらない結果となったが、数値そのものはかなりの違いがでている

0.00208 0.15293
RXM SP500

 

2020年の比較結論

長期的にみるとRXMとS&P500のパフォーマンスにあまり違いがないとすると、いずれにしろRXMのパフォーマンスは2020年は相対的にみて劣後したということになる。
ボラティリティが高い相場でかつ結果的に上昇した相場でなぜそうなるのか?
リスクリバーサル戦略はあくまでIVのサヤを抜くものであり、そう考えるとIVのサヤがあまり開いていなかったと言えるかもしれない。
プットも高いがコールも高かったのか?VIX指数を見てもコールとプットが合算しているためそのサヤを見るということは難しい。

日経平均オプションのIVを参考にしてみる
IVデータはボラがほほ笑むから引用
7/15 原資産22599
21750 23.422% 24.560% 23.422% 24.240% +0.674
21875 - - - 23.639% +0.619
22000 23.759% 23.759% 22.715% 23.090% +0.616
22125 - - - 22.585% +0.620
22250 21.611% 22.351% 21.611% 22.045% +0.590
22375 - - - 21.505% +0.583
22500 21.019% 21.300% 20.670% 21.052% +0.549
22625 - - - 20.610% +0.525
22750 19.836% 20.527% 19.836% 20.240% +0.504
22875 - - - 19.868% +0.481
23000 19.640% 19.963% 19.293% 19.568% +0.530
23125 - - - 19.349% +0.485
23250 18.843% 19.426% 18.739% 19.132% +0.442
23375 - - - 18.915% +0.374
23500 18.513% 19.055% 18.398% 18.801% +0.410

10/15 原資産 23509
22750 19.326% 19.541% 18.693% 19.098% +0.076
22875 - - - 18.567% +0.109
23000 18.160% 18.522% 17.705% 18.038% +0.048
23125 - - - 17.554% +0.031
23250 17.418% 17.575% 16.717% 17.071% -0.005
23375 - - - 16.606% -0.006
23500 16.509% 16.675% 15.881% 16.197% +0.032
23625 - - - 15.838% +0.083
23750 15.889% 15.982% 15.161% 15.501% +0.063
23875 - - - 15.221% +0.098
24000 15.365% 15.365% 14.551% 14.911% +0.106
24125 - - - 14.701% +0.107
24250 14.663% 14.948% 14.203% 14.555% +0.079
24375 - - - 14.408% +0.101
24500 14.730% 14.730% 14.132% 14.372% +0.164

3%離れているコールとプットのIVのサヤは4%台後半くらい

2021 10/14 原資産 28567
27500 21.395% 21.895% 21.034% 21.844% -0.255
27750 20.606% 21.176% 20.374% 21.094% -0.269
28000 19.755% 20.483% 19.659% 20.420% -0.223
28250 19.316% 19.889% 19.017% 19.889% -0.177
28500 18.976% 19.358% 18.489% 19.358% -0.131
28750 17.927% 18.843% 17.798% 18.843% -0.086
29000 18.107% 18.330% 17.342% 18.330% -0.054
29125 - - - 18.067% -0.109
29250 17.011% 17.840% 16.928% 17.840% -0.129
29375 - - - 17.650% -0.148
29500 16.763% 17.543% 16.689% 17.459% -0.168
29625 - - - 17.351% -0.187
29750 17.099% 17.320% 16.445% 17.242% -0.207

2021年でもあまりサヤは変わらない

2021年の年初と年末

0.18571 0.28793
RXM SP500

低ボラだった2017年

0.110531 0.18415
RXM SP500

マイナスになった2018年

-0.00042 -0.07009
RXM SP500

コール買いプット売りはむしろ下落相場に強いようだ

2020/3/13 原資産 16984

16250 76.892% 77.665% 70.551% 73.930% +7.158
16500 75.561% 76.273% 69.265% 73.018% +7.288
16625 72.052% 75.324% 68.925% 72.562% +7.354
16750 70.640% 74.839% 68.334% 72.106% +7.419
16875 68.902% 74.099% 67.742% 71.650% +7.484
17000 67.165% 73.534% 67.165% 71.194% +7.549
17125 70.029% 73.055% 66.601% 70.738% +7.615
17250 72.797% 74.969% 65.424% 70.282% +7.680
17375 71.176% 73.292% 63.174% 69.657% +7.576
17500 69.450% 71.508% 64.108% 69.032% +7.472

コロナショック真っただ中であっても終値ベースではサヤに大きな違いはない
リスクリバーサル戦略のリターンは、IVのサヤというより実際のプレミアムの差が反映されると考えた方がよさそうだ

リスクリバーサル戦略と原資産トレード

リスクリバーサルと原資産のパフォーマンスがあまり変わらないのならわざわざリスクリバーサルトレードを行う必要はないようにも思える。
しかし、原資産を購入する場合はそのまま保有し続けて当該パフォーマンスとなる。他方リスクリバーサルは限月毎に一旦清算されるため、利益が出た場合は元本に組み入れて再投資できるため、一定期間が経過すると複利効果が生まれてくることになり、これは大きな違いである。
ここで利回りを算術平均で考えようが幾何平均で考えようが同じことである。
他方RXM指数は日々コールとプットを前日比で算出し、それをインデックスに組み入れていると考えて良い。
そうすると、プットをショートする場合は価格が下落すればプラスリターンになり、そのプラスリターンには上限値があることになる。
また、コールのロングのマイナスリターンも下限値があることになる。
いずれにしろRXM指数はパーセンテージリターンでインデックスを累積算出しているということになり実際のプレミアム価格でのリターンではないことになる。
リターンが前日比1%だとすると、算出対象価格が100だと1増え、1000の場合は10増える。
特にRXW指数のリターンは純粋なプレミアムでのリターンではなく、VWAPを使っているようである。

式 (5) は、新しい SPX コールおよびプット オプションが設定された瞬間からのリターンを計算するために使用されます。
売却されたと見なされます (午前 11:00 ET) から市場終了まで:

• M_newt
は、新しい国債口座の価値であり、新しい ATM のストライクに等しい
SPXプットオプション;
• Call_newvwapは、新しい 25 デルタ OTM SPX コール オプションの VWAP です。
• Put_newvwapは、新しい 25 マイナスデルタ OTM SPX プット オプションの VWAP です。
• Put_newt
東部標準時午後 4 時前の SPX プット オプションの最後のビッド/アスク クォートの平均です。と
• Call_newt
東部標準時間午後 4 時前の SPX コール オプションの最後のビッド アスク クォートの平均です。
注: 利子はロール日に国庫短期証券口座に累積されません。
2 つの部分の積 (つまり、1 + = (1 + 1
) ∗ (1 + 2
) ) はロール日の総収益です。

ざっくり言えば、RXM指数は前日比のリターンではなく、当日の終値と当日のVWAPを比較しているものと言える。
従って仮に前日より大きく値が動いたとしてもそれは反映されないこととなる。

日経平均の過去のリターンとリスクリバーサルトレード

RXM指数のようにオプションを毎日売買していくのはコストなどの面からみて現実的ではない。
SQ日に建て、SQ前日に清算を繰り返した場合実際どうなるのか。
0.25のδのオプションはATMから概ね3%程度離れたところになる。そうすると、各限月で±3%を超える部分のリターンがどれくらいになるかを算出すればよい。
±3%超トータル
上昇時 371%
下落時 325%
全体の月数は273

結論から言えば仮にリターンが上昇時と下落時で同じであったとしてもコールとプットに価格差があれば高い方を売って安い方を買い続ければその差が累積されて利益になっていく。もっとも、上昇時と下落時のリターンが同じとは限らない。実際日経平均の当該期間では上昇時のほうがリターンが多い。これが逆に下落時のリターンが多い時期もある。
極論すればいくらプットオプションのほうがコールよりも高くてもほとんどの期間でプットがインしてしまうようなことになったり、或いは売った時のIVよりも現実のボラが大幅にかつ常に高いような状態が続けば利益にはならない。
あくまでリスクリバーサル戦略は原資産が正規分布通り、或いはそれに近い分布を描き、かつBS式によって適正な価格づけが行われる前提で、その価格に歪みがある場合に機能するもの、と考えたほうがいいだろう。
そういう意味ではやはりIVと現実のボラティリティが重要になってくる。

リスクリバーサル戦略からみるデルタヘッジ戦略

原資産が正規分布をしているという意味はいくつか捉え方の違いがあると思われるが、いずれにしても正規分布をするということを前提として考える。
そうすると、デルタヘッジをしている場合もデルタヘッジを追加したり外したりする場合も正規分布の確率分布に応じ行われることになる。
プットを売る場合のデルタヘッジは先物を売ることになる。
この時プットのデルタが減少すれば先物を買い戻してデルタを合わせる。プットのデルタが増大すれば先物を追加売りする。
δ-0.5のプットを売る場合、ミニ先を5枚売る。
相場が上昇すればミニ先を買い戻すのでその決済においてはマイナスが計上される。
逆に下落していく場合はミニ先を追加売りする。この時、当初売っていたミニ先には含み益が生じていることになる。
相場が上昇していった場合にはプット売りの部分は利益になるがデルタヘッジの部分は損失となる。
相場が下落していった場合にはプット売りの部分で損失が生じるが、デルタヘッジによってその部分は相殺される。
もっとも、相場は上下動を繰り返している為最終的に上昇して終わってもその過程で下落していた場合もあるし、下落して終わった場合も同様である。
仮に、デルタを完全にヘッジできたとすると、相場が下落しプット売りの権利行使価格を突き抜けて終わった場合でもその損失はデルタヘッジにより損失とはならない。
一方で相場が上昇した場合はプット売りの部分は利益になるがデルタヘッジの部分で損失となる。この時デルタヘッジ解消の過程でどれくらいの損失がでるか?仮にプット売りの利益とデルタヘッジ解消の損失部分が同じで相殺されるとすると同様に損失とはならないが利益もない。

ヘッジのためのミニ先だけで損益を考えてみると、デルタヘッジのリバランスを行わない場合、原資産が正規分布をしていると結果として損益はゼロに収束していく。
仮にデルタヘッジをしたとしても、そのデルタヘッジをリバランスする前提となる原資産の上下動が正規分布をしているのならば結果として損益はゼロになる。
相場が大きく下落してプット売りが大きく損失をだした場合を抽出すると、その損失をデルタヘッジによって補填しているように見える。
相場が上昇する時には当然ミニ先売りの部分で損失が生じるがそれをプット売りの利益で補填しているように見える。
確かに相場が上昇し続けると、いずれプット売りのヘッジはする必要がなくなるのでミニ先売りの損失がどんどん膨らむということもないから、その部分と相場が下落していった場合の事を考えると、デルタヘッジしたミニ先売りの部分で大きく利益がでているのでデルタヘッジの為のミニ先売りの部分だけをみると長期的にみて利益が出そうである。
しかし、反対にプット売りの損失がある。結局、プットの売り建値がいくらだったのかに損益が依存する。
リスクリバーサル戦略は
原資産が正規分布していると仮定するとコールもプットも同じ価格になるはずだから安い価格のほうを買って高い方を売る。
その価格差が利益となって蓄積していく。
デルタヘッジ戦略においては、原資産が正規分布をしていると仮定し、IVと現実のボラが同じで、かつデルタが完全にヘッジできれば損失もなければ利益もないのが帰結である。
そうすると、当該オプションのIV=価格が現実のリターンに比べて高い場合には売っていたら利益となり、買っていたら損失となる。が、それは誰にも分からない。
一般的に言って、プットの価格は高いがそれはコールに比べれば高いという意味合いが強い。
仮にコールよりも高いプットだとしても現実のボラがさらに高くなったら、売っていたとしても利益にはならない。
従ってデルタヘッジ戦略は、現実のボラの予測がある程度当たらなければ利益になりづらい。
その意味で、リスクリバーサル戦略は原資産が正規分布をしており、コールとプットの価格差があれば、長期的に高い方を売って安い方を買い続けることによりその価格差が利益の源泉となる。

リスクリバーサル戦略は聖杯か

リスクリバーサル戦略は聖杯のようにみえるが、この戦略は前提の条件というものがある。
少なくとも原資産が正規分布をしていなければならない。
またBS式による価格付けが適正であるという前提でその価格付けに結局のところ歪みがなければならない。
原資産が完全に正規分布して価格付けも適正ならば、長期的にみれば損益ゼロへと収束していくだろう。
これはBS式が適正な価格付けをしていないから利益になるという意味ではなく、BS式を人間が利用して都合のいいような価格付けを行った結果が利益の源泉となると言っていいのかもしれない。
仮に条件に合致したとしても実行する人がすくないのはまず勝率が悪いということがあげられ、かつ、一時的にせよ暴落のリスクをまともに受けてしまうという事があげられるだろう。
やりっぱなしが基本の戦略であるため、一撃で退場もありうる。そのリスクのわりにリターンは長期的にみて蓄積されていく。

馬券裁判とサッカーマティクスとオプショントレード

両者に共通しているのは、的中させる事を目標とするのではなく、過小評価されているものに賭けて長期的に利益を積み上げていくという点である。
人気が高い馬や、実力のあるチームが必ず勝つとは限らない。
人気が低ければオッズは高くなる。人気が低いからと言って必ず勝たないとは限らない。
もし勝てば、リターンは多い。逆に人気の高いチームが実力より過大評価されていた場合、仮に勝ってもリターンがより少なくなってしまう。

この点、オプションの場合はIVで判断されるといってよい。本来コールもプットも、また、各権利行使価格においてもIVは一定なはずであるがスマイルカーブに見られるように違いがある。
IVが高いということは言わば人気があるからと言えるかもしれない。
デルタヘッジ戦略でみられるように、要するに現実のボラティリティより低いIVを買い続ければ結果的に利益となり、高ければ売り続ければ利益となるだろう。
実力というものを現実のボラティリティだと考えると、その現実のボラティリティより低いIVは過小評価されていることになり、現実のボラより高いIVは過大評価されているということになるだろう。

いずれにしろ、馬券裁判で触れられているように資金管理が重要となる。いくら長期的な確率で優位性があるとしても、短期では負け続ける可能性があり、その間に資金が枯渇してしまえばいくら優位性のあるトレードでも絵に描いた餅となる。
従って、ある程度の的中率の向上を目指す必要が出てくる。これはリターンとのトレードオフとなる。

オプションの場合は、馬券などと違い買うばかりではなく、売ることもできるが、売る場合でもインしないという的中率がある点は同じだろう。
しかし、馬券とは違い、買いと売りを組み合わせることができるのが大きな利点である。それがリスクリバーサルトレードだと言えるかもしれない。

資金管理とパーセンテージリターン

資金管理とは儲けるための手法というよりも儲かる事を前提にして、資金管理によってその儲けを最大化できるのか?といった観点から考えなければならない。
そもそも、儲からない手法であればいくら資金管理が優れていても儲からないのは当たり前である。
そういう意味では資金管理は確率論的な考え方と親和性がある。結論から言えば、一定額を投資し続けるのではなく、資金の何パーセントかを投資するのがベターであろう。
ギャンブルでは勝ち始めたら賭け金を多くし、負け始めたら少なくする、などというやり方もあるが勝ち始めとか負け始めなどという判別はかなり個人差があるだろう。
定額投資では定率投資であれば資金が枯渇するということが理論上有り得ない。負け続ければ定率投資であっても現実的には投資できなくなるが。
ドルコスト投資法も資金管理の一種とみてもいいかもしれない。ただ、これも結局は投資対象が上昇することが前提となる。

Posted by kyoufusisuu