日経平均のコールとプットのスキュー

2021年9月24日

https://www.jpx.co.jp/derivatives/futures-options-report/archives/tvdivq0000002b6s-att/rerk1012.pdf

まず過去の日経平均のデータでスキューを算出する。統計で使われるものやS&P500のスキュー指数で使われる算出法ではない。

2004~2018

0.014817 1350 1488 0.366848 0.404348
0.029634 307 376 0.083424 0.102174
0.044451 66 39 0.017935 0.010598
34 20 0.009239 0.005435
1757 1923 0.477446 0.522554

正規分布していれば左右対称になるがそうはなっていない。1σと2σの部分では+のほうが多く、3σとそれを超える部分では-になるほうが多い。

基本的にスキューはテールリスクを判断するものとして扱われているので、3σと4σに限定すると+側より-側の方が約1.7倍前後発生回数が多い。
ファーアウトのプットのIVが高く取引されるのは当然ということになる。

これを実際のコールとプットのIVに当てはめてみる。概ねデルタが0.1以下になる部分で1500円前後の権利行使価格の範囲内でコールのIVの平均値、プットのIVの平均値を比較してみると2021/8/16現在、プット側が約1.7倍程度高いことが分かる。

とは言え、過去のIVと現在のIVを比較して高い安いを判断してもあまり意味がないのと同じようにこの場合も直近の実際のスキューと比べる方が良さそうである。

スキュー指数を暴落の先行指標として使う場合が多いようだが各テクニカル指標と同じでいつ判断するか或いはどこに基準をおくのかなどで違ってくる。
プットが買われているのを買われ過ぎと捉えるのか、これから暴落がくるととらえるのか、暴落の最中なので買われているとみるのかでまったく違ってくる。

相場が急落しているときはプットともにコールのIVも上がる傾向にあるので、恐怖指数が上昇してもスキューは上がらない場合がある。
逆に恐怖指数は上昇していないのにスキュー指数が上昇している場合があり、この場合はプットが相対的に買われているということになる。
このことからスキュー指数を暴落の先行指標として捉える向きがあり、実際ある程度の数値以上をつけたとき、それから相場が下落していることが多いが下落までに一定の時間がかかる。

スキューが上昇していないから暴落はないと買いにまわっても下落相場の最中ということもありえるため必ずしもうまくいくわけではない。
スキューが上昇しているからとプットを買っても、暴落が来る頃にはプットが減価していてあまり旨味がなくなっている場合もある。

ボラティリティ・スマイルとスキュー 

1σ2σではコールの発生確率が高いのに現実のIVはプットの方が高い

1σではコール側が約10%2σでは約20%ほどプットより多くなっている。
従って本来プットのIVのほうがコールより低くなっているはずだがそうはなっていない。

マーケットメイカーの意味するところ

板がとんでいてもIVは一定の値に落ち着く。コールよりもプットが高く、プットはかならず権利行使価格が安くなっていくほどIVおよび価格は一定の感覚で高くなっていく。
マーケットメイカーがいようがいまいが、いずれにしても相場に影響を持つ存在によって一定のIVに落ち着いているのは間違いない。
重要なのはそういった存在が何を根拠にしてIVを決定しているのかという点である。価格からIVを逆算するにしろそれは同じ事である。
実際の過去の日経平均のボラティリティは明らかに異なっているのだから、別の何かの根拠があるはずだが、さらに重要なのは過去のボラティリティとは違うという点である。
過去のボラティリティ通りならないのにオプション価格の計算には正規分布や対数正規分布などの確率的な部分が必要である。
ブラックショールズ計算式が適正なオプション価格を算出しているとするならば前提条件が違っていればそれは長期的には間違った結果になるはずである。
短期的にみれば顕在化しなくてもいずれそのギャップは必ず現れてくるはずである。
適正な価格であるとするなら、そもそもコールとプット、或いは権利行使価格でIVが変わっているのはおかしな話でもある。
市場がより現実に即したIVを適用しようとしているのかもしれないが、そうだとするとブラックショールズ計算式の前提条件が間違っているということになる。
ともあれ、市場が間違っていたとしても取引されている価格に逆らう事はできない。
その価格が間違っているとしてもその価格で売買するしかない。
いずれにしても最終的に正解か不正解か分かるのはSQである。結果としてボラティリティが高かったのか低かったのかがそこで判明する。そうすると、やはり現実のボラティリティしか拠り所とするところはない。
結局プットが高いのは暴落のリスクを織り込んでいるからであり、コールが安いのは過去のボラティリティに比べて安いというより、プットと比較して安い、相対的なものだということである。

1期限ごとのボラティリティとリターン

SQごとのトータル偏差
1期限ごとのボラティリティは約6.2%。1期限20営業日だとすると、1日のボラは約1.4%。
365日換算だと26.7%となり、かなり高いIV表示となる。実際はコールのIVがこれほど高くなることはなく、またプットも権利行使価格が高いゾーンではこれより低い場合が多い。
ボラティリティ自体は平均から動けば動くほど高くなりがちなので上昇と下落を加えた計算結果のほうが、上昇月のみ、下落月のみで計算した場合より高くなる。
いずれにしろ、コール側のリターンとプット側のリターンを見ると大して変わらない結果である。
従って、コールのIVは過小評価され、プットのIVが過大評価されている部分があるということになる。
しかし、ファーアウトのプットのIVは常にATM付近よりかなり高く取引されているからと言って売り続けても利益にならない。
これは、正規分布で出現回数が少ないとされるゾーンでの株価のリターンが多いからである。±7%超
出現確率の少ないゾーンではオプション価格の算出においてこの事がうまく反映されず、IVを高くすることによって対応しようとしているのかもしれない。
しかし、連続した権利行使価格間では一定の間隔で価格を調整せざるを得ず、特定の権利行使価格だけIVを極端に上下させることはできない。
また、出現回数の少ないゾーンでIVを上げるならばコール側でも同じようにされなければいけないが、プット側に比べるとかなり緩やかになっている。

Posted by kyoufusisuu