相場上昇時にコールのIVが下落する理由
オプションは売り買いトントンである。勿論ヘッジのあるなしや個々のポジションにおいて損益状況はさまざまである。
いずれにしてもデルタヘッジを行うことを原則とすると、コールのショートポジションは相場上昇時に先物を買い、ロングポジションは先物を売ってデルタを調整することになる。
さて、相場があまり動かないような時、あるいは緩やかに上昇下落している時などはデルタヘッジそのものはシナリオ通りに行われるだろう。
ここで、相場の動きが大きくなった時どうなるか。
コールのショートポジションは損益状況にも関係するが、一般的には先物を後追いでデルタヘッジ買いを行うだろう。
ではコールのロングポジションはどうか。この時既にコールのロングはデルタが増大しており、先物をわざわざ売ってデルタヘッジしなくても、トータルで利益となっている可能性もある。そうすると、このポジションを決済することもありうる。というより、そもそもそういう意図でポジションを組んでいるはずである。
ネットなどでよく紹介されるデルタヘッジで利益をあげる手法ではここでさらに先物売りを追加するわけだが、この手法は要するに相場が上がったら下がる事を想定、いや、下がらなければ基本的に利益をとれない手法である。このポジティブγのロングコールデルタヘッジ戦略でなかなか利益があがらない場合が多いのは相場がそう都合よく動かない場合も多く、また、そのような相場はIVが下落してコールのプレミアムが減価しがちだからである。
従って、コールロングの含み益が先物売りヘッジの損失を上回っていればそこで利益を確定させる、というのも一つの戦略であり、むしろそれが王道と言えるかもしれない。
このように考えると、ある程度相場が上昇した場合はコールロングのポジションは売却に回る。
逆にコールショートポジションは先物を買ってヘッジをするか、コールショートポジションを決済するかになる。このとき当該権利行使価格までまだ価格差があり、ショートポジションと先物買いトータルで含み益が出ていなければわざわざ決済する必要もないのでショートポジションは維持したままとなる。
また、このように考えると既存の建て玉はロングが売却されるものが多くなりがちである。
もっともコールをロングする新規参入者もいるだろうし、逆にショートしたい新規参入者もいるだろうが、いずれにしても既存の建て玉においては売却が優勢となろう。
往々にして相場が上昇している時はコールのIVが上昇しにくいことが多く、結果的にポジティブγのコールロングでダイナミックデルタヘッジ戦略では利益がなかなかでないものとなる。IVが上昇しなければ利益にならないから当然と言えば当然だが。
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