日経平均の前日終値と翌日始値のギャップ

2023年1月22日

相場が急変している時に、ナイトでアメリカ相場が大きく下落した場合に念のためヘッジの売りを入れる場合がありますが、往々にして翌日はそれほど下げずに始まる場合があります。それどころか、元に戻っている、むしろ上げていたりして大きく損失を被ったりすることがよくありました。
そこで、実際にギャップはどれくらい発生しているのかを検証してみます。
本来は前日終値と翌日の先物の始値で比較したいのですが(現物の寄り付きは概算なので大きく動く時は先物に現物がサヤ寄せするから)、そうすると恐ろしく面倒で、かつJPXのデータでとうろうとするお金もかかるので(10年分だと1万円は必要)とりあえず現物の概算で集計してみます。

標準偏差が0.76%

平均は0.04%

0.00768 1192 1338 0.32 0.36
0.01537 434 538 0.12 0.15
0.02305 92 82 0.03 0.02
0 1 0.00 0.00
3677 1718 1959 0.47 0.53

実際は2.3%以上のギャップをつけた下落はありませんでした。勿論これは現物なのでボラに1%程度プラスして考えると2.5~3.3%の発生率は約3%程度となります。

仮にナイトで下落していた場合、でヘッジを入れるのと翌日相場が始まってヘッジを入れる場合を考えた場合、前述のようなリスクを考慮するとむしろ3%程度下落してヘッジを入れるなら翌日始まってからでも遅くはないとも言えるようです。

あくまで現物の概算なので実際は違いますが、ナイトで大きく下がったところでヘッジを入れる場合、翌日そこから更に大きく下げている確率は少ないと考えられるので、結局のところギャップダウンを恐れてナイトでヘッジを入れるのと翌日始まってからヘッジを入れるのとあまり違いはないのかもしれません。

日経平均採用銘柄が値段が付かない場合は日経平均はどうなるんですか?

気配値があれば気配値、なければ前日終値で計算されます。

CFDの値からギャップを推測

CFDは現物が原資産にしろ、現物が動いていない時は先物価格を参照しているはずであるからCFD価格を参考にしてみよう。
2020年3月の現物

始値 高値 安値 終値
3月9日 20343.31055 20347.1895 19472.26 19698.76
3月6日 21009.80078 21061.1992 20613.91 20749.75
3月5日 21399.86914 21399.8691 21220.76 21329.12

3/9 始値 19667

3/6 始値 20920  終値 20282

 

いずれにしろ、先物価格は現物終値水準から翌日始値水準では大きくギャップが発生する場合がある

当たり前と言えば当たり前だが。

逆指値を指しておけば大きな損失は防げそうだが、前述の如くナイトで大きく動いたものの翌日寄り付き付近ではあまり動いていない(前日現物終値付近と変わらない)場合も多く、この場合は無駄な損失を被ったことになる。

2015年の先物の日々の値動き

JPXデータクラウドから2015年の先物のデータを購入。
2015年を選んだのはボラティリティが過去の平均値にもっとも近かったからである。
結論から言うと、やはりナイトで損切りをするのと翌日損切りするのとでは変わらない。
正確に言えばナイトで大きく下げた時に損切りをする場合、その損切り水準によってはそこからギャップアップして始まる場合がかなり多い。
勿論、ナイトで下げて翌日寄り付きは少し戻ったが、場中に更に下げが拡大する場合もあろう。

0.00575 ナイト安値ギャップ
0.00761 23 148 9.43% 60.66%
0.01521 3 42 1.23% 17.21%
0.02282 1 19 0.41% 7.79%
1 7 0.41% 2.87%
244 28 216 11.48% 88.52%
0.00013 当日始-前終
0.00896 78 106 32.10% 43.62%
0.01791 18 26 7.41% 10.70%
0.02687 11 2 4.53% 0.82%
1 1 0.41% 0.41%
243 108 135 44.44% 55.56%

ナイト安値より下落したのは28回 ほぼ1%以下

前日終値よりギャップダウンして始まった回数108回 平均-0.7% 2%以上下落したのは10回

ナイト安値よりギャップアップして始まった回数216回 1.5%以上ギャップアップしたのは26回

 

前日引けから翌日引けまで持ち越した場合と一定の率で利確した場合

現物日々騰落

0.01329 77 110 0.314286 0.44898
0.02658 18 25 0.073469 0.102041
0.03987 7 3 0.028571 0.012245
3 2 0.012245 0.008163
105 140 0.428571 0.571429

先物翌最安

-0.604% 前日終翌安
0.011632 106 73 43.62% 30.04%
0.023264 38 5 15.64% 2.06%
0.034896 13 1 5.35% 0.41%
7 0 2.88% 0.00%
243 164 79 67.49% 32.51%

2%超下落25回 現物引け18回

先物翌最高

0.645% 前日終翌高
0.010764 41 122 16.87% 50.21%
0.021528 13 51 5.35% 20.99%
0.032292 0 13 0.00% 5.35%
0 3 0.00% 1.23%
243 54 189 22.22% 77.78%

 

2%超上昇20回 現物引け7回

上昇を取ろうとする場合は翌引けまで待つよりも一定の率で利確したほうが良さそうだが、

実際2%で利確すると40%のリターン 現物7回22.8%

先物上昇リターン計 125.37% 2%で利確20日引けリターン34.6% 内マイナスリターン6.037%

2%で利確してもリターンは10%ほどしかよくならない

現物日々騰落

0.036% 日々騰落
0.01329 77 110 31.43% 44.90%
0.02658 18 25 7.35% 10.20%
0.03987 7 3 2.86% 1.22%
3 2 1.22% 0.82%
105 140 42.86% 57.14%

先物日々騰落

0.046% 日々騰落
0.013676 70 111 28.81% 45.68%
0.027351 24 25 9.88% 10.29%
0.041027 7 2 2.88% 0.82%
2 2 0.82% 0.82%
243 103 140 42.39% 57.61%

 

0.896% 上昇リターン
0.008545 0 62 0.00% 44.29%
0.01709 0 40 0.00% 28.57%
0.025636 0 21 0.00% 15.00%
0 17 0.00% 12.14%
140 0 140 0.00% 100.00%

 

-1.109% 下落リターン
0.010515 50 0 48.54% 0.00%
0.02103 21 0 20.39% 0.00%
0.031546 18 0 17.48% 0.00%
14 0 13.59% 0.00%
103 103 0 100.00% 0.00%

±2σが薄く、±3σ以上が正規分布より厚い また下落した場合の方が厚い
現物の2004~2018でもやはり同じような傾向を示す

0.014817 1350 1488 0.366848 0.404348
0.029634 307 376 0.083424 0.102174
0.044451 66 39 0.017935 0.010598
34 20 0.009239 0.005435
1757 1923 0.477446 0.522554

ショートストラングルなどオプションを売り続けた場合、権利行使価格にもよるがほとんどの期間で利益がでる

しかし、大きく下落する場合は更にIVが急騰する事が予想され、仮にそこで損切りする場合はデータ以上の損失を被ることが想定される

先物の場合、1%下がった場合は1%の損益4%下がった場合は4%の損益だが、オプションの場合はそれが変動する

プットオプションの場合、例えば現物が1%下落しても大して反応しない場合もあるし、4%下落したら価格が10倍程度になるときもある

平時の時に儲けてもボラが高い時に大きな損失を出すいわゆるコツコツドカンを回避するにはボラが高い時の損失を回避する必要があり

平時の時に儲けられなくてもボラが高い時に大きな利益を出せばいいという考え方もある

γロングVegaロング戦略

日々の騰落率は過去70%以上の割合でσ±1の範囲内にある。
ショートストラングルで利益になる可能性が高いが、±2σを超えるような大きな変動時にどう対処するのかが問題となる。
単純に損切りをするという手もあるが、そうすると通常ではありえないような高いIVで損切りする事もある。このような高いIVでもそのうち低下するが、高いIVで損切りをし続けるとトータルで損失となる可能性もある。
そこで売りの外側に買いを入れ枚数を多くするレシオスプレッドを組む。
この場合、コール側は外側の買いは同じ権利行使価格を2枚にし、プット側は外側に1枚、更にその下側に1枚と並べる。
コールはアウトでもフラットな価格になっているため、同行使価格でもコストは受け取りになる場合が多く、プットはアウトにいくにつれて価格が割高になっていくため同行使価格で2枚建てると多くの場合は損失になる。
また、ザラ場で高いとか安いとか判断して決済するのは結局裁量になってしまうので常に引けで建て、翌日引けで決済する。
1日で決済する意味は、期間が長引くと価格の変動幅がそれに応じて大きくなる半面、時間をかけて数パーセント動いても利益にならず損失になってしまうからである。
10日かけて5%動くのと翌日に3%動くのでは翌日3%のほうがインパクトが大きい。

新たに建てる時は当日引けで建てるが、当日の上下幅に応じてポジションをずらしていく。上昇すれば上に組み直し、下落すれば下に組み直す。
IVが暴騰した場合等で同じようなポジが組めない場合(コールを同行使価格で2枚組めないとか)は見送ってもよい。

σ±1の場合でVegaが変わらなければほとんどの期間でθ分若干のマイナス(数千円)、σ±2を超える場合はプラスとなり、σ±3を超えるようだと大きなリターンを得られる。
勿論建てた時のIV及び決済する時のIVに大きく依存し、さらには残存日数も影響する。
残存日数が少なくなるとVegaの反応が鈍くなるのでSQ週は除外。SQ週も分布の割合はほぼ変わらないので除外してもリターンに大きな影響はない。
SQ前4営業日の偏差騰落状況

しかし、あくまでVegaが利益の源泉なのでIVが下落する場合は損失が発生する。
IVの下落は約半分の期間で発生するが日経平均VI指数のボラ
VI指数の日々の騰落率を合計したトータル騰落は大きくプラスとなる。
対数収益率について 株価リターンの計算
2019年~2022年11/25日までで、コロナショック時の2020/2/25~5/8(5/11 28.01)までを除外してもトータルで82.8%のプラスとなっている。
この場合基準価格がいくらかではなくIVの上下、騰落が影響するのである一定期間IVが下落しているとか一定期間のIVが上昇したとかは基本的に関係がない。
前日と当日のIVがどう動いたかという事がVegaに影響するので、Vegaロングの場合は結局のところIVのトータルの騰落率がプラスになっている必要がある。
平均IVが仮に20だったとすると、約80%の上昇なので16ポイント。Vegaが仮にプラス10であれば単純計算で160×1000円のプラスになる。
⊿はほぼフラットだが、γはロングなので大きく相場が変動する時は±いずれにふれても⊿が一方向に大きくなり収益の増大が見込める。

とは言え、日々売買をするとその都度、手数料とスプレッド分の損失がこれに加わり、収益を圧迫。これを考慮すると確実に利益となるとは言えないようである。

IVロングVI指数売り戦略

日々のVI指数の騰落の合計リターンはプラスになるにも関わらずVI指数は上がり続けることはない。また、VI先物指数は大きくマイナスのリターンとなっている。
2019~2022/12/06 トータル -241% 平均-0.25%

-0.25% 日々騰落
0.04153 454 306 47.59% 32.08%
0.083059 91 62 9.54% 6.50%
0.124589 12 14 1.26% 1.47%
4 11 0.42% 1.15%
954 561 393 58.81% 41.19%

※日経平均ボラティリティー・インデックス先物指数は日経平均VI先物を対象にして、期近限月と期先限月のウエートを日々調整することで、仮想的に満期1カ月の日経平均VI先物を合成し、その合成した先物価格の日々の変動率に連動するよう設計された指数
現実に取引をするとなると日経平均VI先物を売買することになるので、厳密には違う値動きとなるが基本的にはこのような傾向を示すだろう。
日経平均VI先物指数は要するにVXXのようなもので長期的には減価する性質のものなのでトータルリターンでマイナスになるのはおかしなことではありませんが、興味深いのはVI指数のトータルはプラスになるという点です。

トータル166% 平均+0.176%

0.176% 日々騰落
0.068368 418 308 44.14% 32.52%
0.136735 86 86 9.08% 9.08%
0.205103 10 23 1.06% 2.43%
1 15 0.11% 1.58%
947 515 432 54.38% 45.62%

 

VI指数のトータルリターンはプラスなのになぜ上昇し続けないのか

VI指数に限らず、一旦基準価格が上昇しほぼ同じ率で下落すると元の値より減価します。VI指数は形を変えたボラティリティ指数ととらえることができますが、ボラティリティ指数自体が回帰性を持っているので上がれば下がる性質を持っています。
トータルがプラスなので、仮にVI指数が売買できるならば保有し続けると値が増大し続けそうですが、実際は上下動を繰り返しているのでそうはなりません。
対数 株価
参照データの始め値は27.55から17.49と下落しています。

VI先物はVI指数で清算されるので理論上高い先物を売って安いVI指数を買っていれば裁定取引ができることになります。

VI指数とVI先物の乖離

VI指数の騰落とVI先物期近の騰落を比較したところコロナショック時のみですが、VI先物が大きく上昇している日にVI指数が上がっていない、むしろ下がっている日が何日かありました。先物の出来高が少ないために値がとんでいるのかと思いましたがそうではなく、VI指数の値がおかしいようです。
2020年3/13日の日経平均現物は前日比-1128.58円-6.08%の暴落ですが、VI指数は前日終値51.48で当日終値はなんと51.1と明らかにVI指数のほうがおかしい事が分かります。これはVI指数はは元々プット側のウェイトが重くなりがちというのがあるようです。逆に暴落時は参照対象の権利行使価格が追加されるのが追い付かないためウェイトが薄くなってしまいIVの上昇が適切に反映されにくいらしいです。
ということはIVの動きの参考としてVI指数を使う場合には暴落時に多少下駄を履かせてみたほうがいいということになります。
いずれにせよVI指数そのものは売買しないのであまり影響はありませんが。

疑似VI指数サヤ取り戦略

VI先物の売りを同時並行でやる事のメリットはIV低下時にVegaロング分の損益を相殺してくれるという事。
またIVが急騰した場合はVegaロングでVI先物ショートの損失を相殺。
そうすると、Vegaロングの意味がほぼなくなりやる意味がないのか?
VIX先物はコンタンゴの期間が圧倒的に多く、買うより売り続けたほうが利益になる。
コンタンゴでなくてもVIX先物はVIX指数より高い場合が多い。高い先物を売って現物を買っておけばその価格差分は利益になる。
これを商品先物の世界では定期売りと言う。銅の定期売り、サヤ取りはロスチャイルドの本業と言う話もあるほど商品の世界では常識的な話である。
しかし、これは現物を保有できる商品だからこそできる話でもある。
VIX指数にしろVI指数にしろ先物はあっても現物はない。
VI指数がIVを表していると仮定するとVegaをロングすることでその買持ちとなり、VI先物を売ることで疑似的にサヤ取りが可能となる。

VI先物は10000単位なので1ポイントの上昇で1万円の損益
Vegaはオプション1000単位なのでVega+1でIV1ポイント上昇で1000円の損益
従って、Vegaは+10程度で日々のIVの上下は相殺される
もっとも、VI先物は流動性が低いし、限月があるので一旦建てたら満期まで売り放置
とは言え、満期の清算値がとんでしまう可能性があるので現実的には満期前日引け付近で決済か
IVが急騰した時などのみ決済
現実のIVの上昇に比べてVI先物の上昇が低い場合も利益とはなるものの、利益の源泉はあくまで先物と現物の価格差になるので、すくなくともVI指数がVI先物より高い場合は見送る
要するにVI指数の下落幅がVI先物を上回ってしまってはサヤを抜けない。この場合は逆にVegaショートの先物買いで利益になる。

満期の違い清算値の影響

日経225オプションのSQは毎月第二金曜日
日経VI先物のSQは毎月第二水曜日※翌月の日経225オプションの SQ日の30日前
Vegaロングポジションは期近のオプションでSQ週までもつとθ分の減価などで反応が鈍くなってしまうため、残存期間が短くなったら期先のオプションに乗り換えるという手もあるがそもそも、「当該SQの翌月限のオプションを元に算出する日経VIのSQ日における寄付10分間(15秒毎なので40回算出)の平均値よりSQ値」が算出されるよくある質問より厳密には取引最終日の翌営業日の8時45分から8時55分。現物の寄り付き前の値動きなのでかなり不安定と言っていい。
清算値算出方法をみると、VI先物をSQ持ち込みせずに前日で決済したほうが良さそうだ。

またVI指数は満期に近づくにつれて翌限月のウエイトを重くしていき、満期では算出対象が全て翌限月のオプションに切り替わる。

いずれにせよVI指数とVI先物のサヤを取るという観点からはVI先物の清算に合わせたほうがいいのか?それとも前日あたりで決済したほうがいいのか?
データ上清算値で合わせて決済しておけば長期的にはサヤを取り続けることができるが、それが現実の取引で可能なのか?
言い換えれば清算値では予想外の動きをすることもあるのでそれを回避するため前日で決済したとして、では実際にサヤがとれるのか?

ポジティブガンマ

Vegaロングγロングポジションでは原資産の大きな変動でも利がのる為、実際にはサヤがあまりとれないとしてもIVの下落によるVegaロングの損失分を補填できる。
Vegaロングの部分は相殺されて、γロングのポジティブガンマ戦略ということになり、残るはθと、売買コストになる。

対数リターンは必要か?

VI指数の騰落率の単純合計は大きくプラスになっていたり、VI先物はマイナスになっていたりと、現実の値と乖離している。
このような乖離を防ぐために収益率を対数でとることが推奨されている。対数収益率について 株価リターンの計算
確かに対象資産を一定期間保有し続けて売却する場合は途中の価格の騰落は関係ないので対数をとったほうがいい。
しかし、そうであるならそもそも途中の日々の騰落率そのものを記録する意味も乏しい。
日々の騰落を記録してそれをトレードに活かすということならば必ずしも対数である必要はない。
気を付けなければいけないのは一定期間の騰落率を合計してその資産が上がっているとか下がっていると判断することだろう。
期限のないような連続した商品は対数正規分布よろしく価格は騰落率が平均±0近辺だと結局上がり続けていくことになる。
価格が下落すると基準となる価格が安いために下落率が上昇率と同じでも上昇幅に比べ下落幅は狭くなるからであり、上昇してから下落する場合は基準価格が高くなっているから上昇率と同じでも、あるいはそれ以下の下落率でも価格が上昇前と変わらなかったりする。
他方、先物のように期限があるものは満期になると新しい限月が追加されていき、言わば価格がリセットされる。
コンタンゴの先物を買い続けると損失が発生すると言われるのは、単純化して言えば常に新しい価格が高い価格で設定され続けるからであり、別に期先が高かろうが安かろうが実は関係がない。ただ、期先が高い先物はそういう傾向にあるというだけである。
VI指数は騰落リターンがプラスなのにVI先物はマイナスが積みあがる原理はこういうことであり、リターンが蓄積されているにも関わらず価格が一定の範囲に収束する理由である。
VI指数そのものを売買し、一定期間保有してその売却益を狙おうとする場合は対数リターンでみたほうがいいだろう。そして対数でみた場合は結局はポジションを建てた時と売却時の差なのだから対数をとる意味はほとんどない。
保有している資産に対して適時ヘッジを入れたり外したり、あるいは一部分を売却したり買い増ししたりする場合などは日々の騰落を考慮せざるを得ない。
その時に対数がいいのか?単純な騰落率で判断したほうがいいのか?
これは別途考察する必要がある。
Vegaロング戦略に関してはIVの上昇率よりもIVそのもの値幅が重要となる。IVが20から40への100%上昇から、40から20へ下落した場合は50%の下落だが同じ20ポイントの幅である。Vegaを10ロングしていた場合は単純計算で同じ損益になるものの、騰落率では大きな違いが生じ、プラスの騰落率になってしまう。
騰落率のリターンだけを追うと間違った判断になりかねない。そうなると結局価格差で判断をしたほうがいいことになるが、だとするならば指数自体は上がり続けないので買い持ちを続ける意味はない。
低くなった時にロングし、高くなったら売却するという王道。しかし、それが適切なタイミングでできれば誰も苦労はしない。
とは言えIVが急落したとしてもVegaロングの損失には限界がある。Vega自体がゼロ以下になることはないのでIV急騰時のほうが価格反応度は大きくなる(はず)。

パーセンテージリターンの意味

株の平均ログリターン値の意味は?
ピッチフォークの株価が5から12に跳ね上がり、その後再び5に暴落した場合、パーセンテージの変化は+140%と-58%で、平均は+82%となります。それは良いことのように聞こえますが、もしあなたが5で買って、5で売っていたとしたら、実際にはあなたのお金で0%の利益を得ていたことになります。同じ期間のログリターンにはこのような不穏な性質はありません、なぜなら足し算で0%になるからです。

この例の本当の違いは何でしょうか?さて、もしあなたがピッチフォークが5の時の火曜日に1ドル相当のピッチフォークを買い、12の時の水曜日にそれを売っていたら、あなたは1.40ドルの利益を得ていたでしょう。その後、水曜日に1ドルを購入し、木曜日に売却していたら、0.58ドルの損失を出していたでしょう。全体では、利益は0.82ドルとなります。これが平均的なパーセンテージリターンの計算です。

一方、もしあなたが火曜日に購入して木曜日まで持ちこたえていた長期投資家だった場合、82%の「平均リターン」を引用することは非常に誤解を招くことになります。

対数を使ったほうがいいと言われるのは要するに価格そのものに着目した場合のことであって、価格そのものではなくその商品がどれだけ値上がりし、どれだけ値下がりするのかを見る場合には対数を敢えて使わなくてもよいと言える。
むしろ、ある商品を買って売却、買って売却を繰り返す場合に毎回同じ金額を投資する場合ははパーセンテージのほうがより適切だと言える。
100円の株を1万円分100株買って50%上昇して売却し、また1万円分買って(66.66株×150円)100円で売却した場合価格は変わっていないが、50%上昇し33.33%下落しているのでパーセンテージリターンは+16.67%となり、価格ベースでみるとおかしいという話になるが、同じ金額を投資し続けた場合は5000円の利益がでて3333円の損失がでてトータルリターン+1667円となる。

パーセンテージリターンとボラティリティ

VVIXのボラが85%で低い、などと言われることがある。VVIXはVIXのオプションから算出されるものである。S&P500のオプションから算出されるVIX指数と同じ方法でVIXのオプションから算出されるため、VIX指数の30日後の予測ボラティリティと言われます。
だとすると、仮にVIX指数が現在20だとすると、1年後±85%の確率が70%弱ほどになるが、そうすると-85%~-170%の確率も10%強あることになる。
-85%と言えばVIX指数3程度になる。
そもそも正規分布に従っていないからそのような計算は無意味ではあるものの、それを言い出すと株価だって正規分布はしていないのではないかと言えるだろう。
そのような考え方が根底にあるのに騰落率からボラティリティを算出して1年後の価格分布がこうなるなどと言っているのは矛盾することになる。
いずれにせよ、パーセンテージリターンと対数の考え方からすれば、騰落率からボラを算出して目標価格を導き出して云々言うのは、期間が長くなればなるほど、実際の価格からはズレが大きくなり意味がないことになる。
従って、騰落率からボラティリティを算出し、予想価格の分布を検討する場合は期間の設定を長くしないほうがよさそうだ、と言える。

算術平均と幾何平均

「過去のリターン平均は5%です」←算術平均、幾何平均の2つがある
「もし投資の期待価値を推計したければ、算術平均を用いるべき」
「投資が目標価値を上回るか下回るか、可能性を推計したいなら、幾何平均を用いるべきである」

期待値は要するに儲かる確率だと考えると、騰落率を対数でとる必要性は必ずしもない。しかし、価格そのものがいくらになるか?という観点からは、騰落率を算術平均や単純計算してしまうとおかしくなってしまうので対数でとったほうがよいことになる。

γと対数リターン幾何平均

オプションはそれ単独で存在するものではなく、必ず原資産がある。原資産の動きに対してどのように価格が形成されるのか、それは⊿やγなどのリスク指標で分かる。
原資産が上昇し、下落する。
この時、原資産が10%上昇し、10%下落すると既述のように原資産の価格自体は元の価格より若干下落しているが、率で言えば同じである。
この原資産の動きに対応してオプション価格は形成されていくが、仮に同じような値動きであってもオプション価格形成にズレがあれば、原資産のヘッジにオプションを持っていてもそこで利益が上がることもあれば逆に損失を被る事もある。
デルタヘッジで利益が上がる、と言われるのも本質はそういうことである。
そして、デルタヘッジをしていれば原資産の価格が上下どちらに変動しても利益があげられると言うのは厳密に言えば利益があがる場合もあれば損失を被る場合もあるということである。
⊿だけをヘッジしていてもγやVegaやθはどうなんだ?という事になる。
一般的にデルタヘッジで利益があがると言われている手法はコール買いの先物売りであるが、この場合⊿はヘッジされていてもγやVegaはプラス、θはマイナスなので保有期間が長くなるほどθ分は減価する。またVegaがプラスなのでIVが下落すればその分も減価する。
γはあくまで原資産の動きに対して⊿がどれだけ動くのかという変化率である。
原資産が100円動いたら⊿が0.02増加する、といった具合である。とは言え、デルタがゼロ以下になることはなく1以上になることもない。
また、γの変化率自体にも違いがある。
【オプション】ガンマとは?
相場が大きく変動したときにポジティブγのときは原資産の変化率に比べてより大きな⊿の増大を招く場合がある。
逆にポジティブγのときに⊿が減少する場合原資産の変化率に比べて相対的に小さな減少率の場合もある。
デルタをそもそもフラットな状態にしていた場合は正の方向負の方向いずれに動いても理論上大きな⊿の増大を見込める。

デルタヘッジで相場が大きく動いて儲かる場合

相場がどちらに動いても儲かるのがデルタヘッジだとよく言われている。このときコール買いのミニ先売りが例としてあげられるが、儲かるのはミニ先売りの買戻しの場面であり、利益の源泉は相場の上下動である。
本来、オプションの買いでデルタヘッジをする場合は文字通り⊿をヘッジしているので相場の上下ではなくIVの上昇で利益をあげる。
そして、この場合IVが上昇すれば利確するのがスジであり、仮に⊿を調整するとしたら意味のないことをしていることになる。
コールを買っている場合に相場が上昇して増大したデルタをヘッジするためにさらにミニ先の売りを追加していく場合、相場が下がらなければ利益は出ない。つまり相場がどちらに動いても利益が出るわけではなく、この時点では相場が下がらなければ利益はでないことになる。
ここでデルタが完全にフラットの状態で相場が大きく動いた場合を考えると、仮にIVが上昇していなくても利益となる。
60円のコールの⊿+0.1、ミニ先売り-0.1のとき仮に日経平均が1000円くらい上昇すればコールのプレミアムはどうなるか?IVが同じだとして⊿が0.1なのでプレミアムは100円上昇するかというと、経過日数などにもよるが少なくともそれ以上の上昇を記録するだろう。

γからオプションプレミアムの計算
オプション価格の変化(ガンマ分)=(日経平均の変化の二乗)×ガンマ÷2

逆に1000円の下落をしたらどうか?IVが同じだとするとほぼほぼ1円とか2円だろうが、ミニ先売りの利益は10万円である。
デルタをヘッジする、と言ってもγロングであればIVが変わらなくても利益になる場合がある。

対数リターンがいいかどうかは投資戦略による

株価の収益率、騰落率などを対数リターンでとったほうがいいかは、要するにどのような投資手法を用いるかによるだろう。
端的に言えばバイアンドホールドのように長期的に商品を保有する場合に騰落率などを単純合計したり平均したりする意味はあまりない。
他方、売買を頻繁に繰り返す場合は対数リターンだとうまくいかないだろう。もっとも動きが大きくない場合は対数でとってもとらなくてもほとんど変わりがない。
実際日経平均の日々の騰落率と対数リターンを比較しても変わりはない。しかし、VI指数のような変化の大きなものだと大きな違いがでてくる。一般的にはボラティリティが大きいというのかもしれない。
このボラティリティを算出する時に対数を根拠にしたほうがいいのか?目標価格ではなく、変化率で統計をとるのが目的なのでやはり純粋な騰落率のほうがよさそうである。

パーセンテージリターン投資

パーセンテージリターンがプラスになっているような銘柄は要するに上昇する場合の上昇率と下落する場合の下落率を比較すると上昇率が高いことになる。これは上昇する割合ではないし、値幅でもなく、ある価格を基準にしたパーセンテージである。
そうすると、パーセンテージリターンの算出法というか考え方からすれば最終的な価格がいくらであろうがリターンはプラスになるのか?
パーセンテージリターンが合計10%の株があるとする。
100円の株を1万円分購入 100円×100株
110円に上昇 90.9株に買い直し 1000円利確
121円に上昇 82.64株に買い直し 999.9円利確
133.1円に上昇 75.13株に買い直し 999.9円利確
119.7円に下落 83.54株に買い直し  1006.7円損切り
107.7円に下落 92.85株に買い直し  1002.4円損切り

バイアンドホールド +7.7%
パーセンテージリターン +9.9%

これをパーセンテージリターンゼロで考えると
110円に上昇 90.9株に買い直し 1000円利確
121円に上昇 82.64株に買い直し 999.9円利確
133.1円に上昇 75.13株に買い直し 999.9円利確
119.7円に下落 83.54株に買い直し  1006.7円損切り
107.7円に下落 92.85株に買い直し  1002.4円損切り
96.93円に下落 103.16株に買い直し  1000円損切り

バイアンドホールド -3.07%
パーセンテージリターン -0.09%

100
110円に上昇 90.9株に買い直し 1000円利確      +10
104.5円に下落 95.7株に買い直し 500円損切り     -5
114.95円に上昇 87株に買い直し 1000円利確     +10
109.2円に下落 91.57株に買い直し 500円損切り    -5
120.1円に上昇 83.26株に買い直し 998円利確     +10
132.1円に上昇 75.7株に買い直し 999.1円利確    +10
125.5円に下落 79.68株に買い直し 499.6円損切り   -5
138円に上昇 72.46株に買い直し 996円利確      +10
117.3円に下落 85.25株に買い直し 1499.9円損切り   -15
105.57円に下落 94.72株に買い直し 1000円損切り   -10
100.29円に下落 99.71株に買い直し 500.1円損切り   -5
95.27円に下落 104.96株に買い直し 500.5円損切り   -5

バイアンドホールド -4.73%
パーセンテージリターン -0.07%

一見するとパーセンテージリターンの方が効率が良さそうだが、相場が下がり続ける場合はどうか
上記の後半だけをみると
138円で1万円分 72.46株購入
117.3円に下落 85.25株に買い直し 1499.9円損切り   -15
105.57円に下落 94.72株に買い直し 1000円損切り   -10
100.29円に下落 99.71株に買い直し 500.1円損切り   -5
95.27円に下落 104.96株に買い直し 500.5円損切り   -5

バイアンドホールド 95.27円×72.46株 残高6903.2 -30.97%
パーセンテージリターン 3500.5円損切り -35%

パーセンテージリターンと正規分布

ある一定の期間の騰落率の合計が±0の場合、正規分布通りであれば結局のところ当該資産を買って売却、売却して買い直しを繰り返しても±0になる。
オプション価格がBS式により常に適正価格であれば、デルタヘッジし続けても結局のところ±0になる。
正規分布している場合ボラティリティがいくらであろうが、プラスとマイナスの分布は50%ずつになる。
仮にプラス側が55%だったとすると、正規分布を前提としたBS式での価格付けは割安だったということになりコールを買い続ければよい。

オプションはゼロサムゲームか?

ゼロサムゲームという概念はゲーム理論が発祥らしい。この定義に従えば株は非ゼロサムでFXはゼロサムゲームとなり、オプションも確実にゼロサムゲームにあたる。
ゼロサムゲームは勝者と敗者の損得が結果として一致することを言うから、FXや先物のような売り方と買い方が常に存在している場合は確かに勝者の利益は敗者の損失となる。オプションも売り方と買い方は同数いる。売り方が多い、などと言う表現は語弊があるだろう。
勿論建玉残が多い場合はそのヘッジ取引も多くなるのでその権利行使価格近辺では売り方買い方の戦争となる。もっともだからと言って相場が大きく動くとは限らないだろう。
プットの売りのヘッジで先物を売る売り方がいる反面プットの買いと先物買いを保有している買い方は相場が下落するに対応して先物を買うかもしれない。
そうすると売り買いが拮抗して相場が動かない事もある。
他方、その権利行使価格を下抜けると一方向に走りやすいとも言われるのは結局バランスが崩れたからになる。
プットを買っていた買い方はもはプレミアムの上昇でもはやヘッジするよりも利確したほうがよければ保有している先物も一気に売却し下げの加速要因となる。
このような観点からマックスペイン理論というものがある。

ゼロサムゲームとマックスペイン理論

マックスペイン理論については理論的に分からない部分も多いが、ざっくり言えばオプションの買い方にとってもっとも利益がでないような価格にSQ値が落ち着く可能性が高いというものらしい。
ただ、極論すると、建玉残が少ないところや、いずれにしろ当該権利行使価格よりインしなければオプションは消滅してしまうから結局想定SQ価格をどこにするかによって変わり、鶏が先か卵が先かになってしまうのではないかという疑問符がつく。とは言え、マックスペイン理論の全容を理解していないためとりあえず上記のような理論だとして話をすすめる。マックスペイン理論でもやはりヘッジがあることを前提にしているため一般的に言われている建玉残が多いところを起点とした考え方と根本は共通しているものと思われる。
オプションがゼロサムだとするとまさに売り方と買い方のせめぎあいということだろうか。
そもそもゼロサムゲームはどのような戦略をとれば勝ちやすいのか?

参加者は自分の利益を最大化しようとして行動するし、逆に損失をできるだけ少なくしようと行動することもある。
ゲーム理論での難しい話以前にオプションの売りの特性がある。オプションをショートする場合は利益はその金額に限定されるが、損失はそれ以上に膨らむ可能性がある。逆に、オプションのロングは損失はその購入額に限定され利益はそれ以上になる可能性がある。
オプションには様々な権利行使価格が設定されており、参加者の利益状況もそれぞれ異なるが、ショートしている場合はその権利行使価格にインしなければ利益となりロングしている場合はインしなければ利益とならない。
そうすると、当該権利行使価格にインするかしないかがキモとなるが、ショートしている場合はインしなければそれでいい。28000円のコールをショートしている場合はそれ以下なら価格がいくらであろうが関係ない(ヘッジしている場合を除く)。他方ロングしている側は28000円以上+購入価格以上にならなければ利益が出ない。他方ショートしている場合は28000円+ショートしたプレミアム以上の上昇をするとその分どんどん損失が積みあがっていく。
つまり28000円のコールの売り方買い方双方ともSQ値28000円以下であればその価格がいくらになるかは関心がなく28000円以上に関心がある。
逆に28000円のプットの売り方買い方は28000円以上に関心がなく28000円以下に関心があることになる。
この場合ゼロサム的に考えるとプット側とコール側に利害が直接関係ないため建玉残に大きな差があっても一方向に動きやすいとは言えないだろう。

利益限定損失無限大のギャンブル

コールオプションをショートするということは要するに利益限定なのに損失無限大のギャンブルをやるようなものである。
もっともギャンブルとは違いヘッジをすることも可能だし、様々なスプレッドを組むこともできるが。
普通、このようなギャンブルがあったとしたら誰もやりたがらないはずである。
宝くじを売ることと似ているが、宝くじは当選金に上限があり、かつ販売額の半分ほどしか払い戻しされないので非ゼロサムである。
宝くじにしろオプションにしろ投下した資金以上のリターンがあれば結局勝率はあまり関係がない。100回やって99回失敗しても1回の成功で投下資金以上のリターンがあれば勝ちとなる。
従って、勝率とリターンが重要となってくる。20%の勝率なら1回5倍を超えるリターンが必要という具合に。

経済とギャンブルの”必勝法”の違いについて

無裁定価格理論とデルタヘッジとIV

端的に言えば、予測ボラティリティ(IV)と現実のボラティリティが一緒ならば当該オプションを買うにしろ売るにしろ利益も出なければ損失もない。
短期的に見れば損失が出ても年単位の長期でみれば損益はゼロへと収束していくだろう。
これがブラックショールズ式による帰結となる。
経済学の理論はおしなべてある前提のもとに成り立っている場合が多い。時にそれは現実味のない前提であったりする。
デルタヘッジもIVが一定の条件であったり、適時適切にデルタヘッジできることが前提であったりする。
実際のボラティリティよりもIVが低ければそれを買い続ければいずれは利益となり、IVが高ければそれを売り続ければ理論上は利益となる。
しかし、そうすると、IVが低いときと考えた時に実際のボラティリティがさらに低くなった時は勿論利益とならないと同時に本来は売るべき時に買ってしまったことになる。このような売買を繰り返していると結果的にIVの上下を当てなければならないことになり、買い続ける或いは売り続けることによる大数の法則が発動できない。
IVの上下を当て続けることは現実的ではない。そこでデルタヘッジの考え方がでてくる。
デルタヘッジは要するに原資産の動きとオプションの動きとのサヤを取っていると言える。IVの最終的な値を予測するのは難しいが、最終的には現実のボラティリティで清算される。
原資産のボラティリティは一つであり、そうすると当該原資産の派生商品であるオプションのIVも一つなはずであるが、実際はアウトオブザマネーのIVが高い傾向にあり、またプットのほうがコールよりも高い。
ブラックショールズ式は株価が正規分布をしていることが前提に(正確には対数正規分布か)なっているが、実際はいわゆるテールリスクの分布が正規分布で言うところの±3以上の部分よりも厚くなっている。
従って、現在のIV分布はこれを反映してアウトオブザマネーのほうが高くなっていると思われる。
そうなると、低いIVを買い高いIVを売れば最終的には同じボラティリティで清算されるのでそこでサヤが取れることになる。
もっとも、当該権利行使価格でインするかしないかで大きな違いが出るため、どの権利行使価格でもいいわけではなく、コールやプットでも違いがでてくる。

 

ランダムウォークと方向性

株価はランダムウォークしている、などと言われるが、ランダムウォークでは動きがランダムであり、その方向性も勿論ランダムである。
しかし、株価などの金融商品の方向性は上か下かである。言い換えれば現在地点から+方向-方向になり、逆方向に進んだりすることはない。
もっと言えば次の地点を起点としてまた上か下かということになる。プラスかマイナスの値がランダムであると言える。
現在地点を起点として上に行ったり下に行ったりしているだけであり、上に行く幅が大きければ現在地点より上方向に行き、下に行く幅が多きければ下方向に行く。
騰落率は要するにパーセンテージリターンであるから、常に現在地点を起点として考え、かつ、騰落率がある程度正規分布しているとするならばほとんどの期間において、いやより正確に言えば7割弱の期間では±1σの動きをすることになり、現在地点よりほとんど動かないことになる。
※一定のトレンドが出来上がり、何連騰もしてから下落する場合などは現在地点より大きな違いがでる場合がある。基準となる位置がズレれば騰落率同じ1%でも上に行ってから下に行く場合は違いがでてくる。この期間が長くなれば僅かな違いでもそれが累積されて大きな違いがでる。

相場が動くということは結局のところパーセンテージリターンに違いがでたときとなる。従って±2σや±3σなどの動きをしたときに相場が動くということになる。
もっとも小さな動きの積み重ねが期間が長くなればなるほど積み重なっていって、大きな動きがなくとも結果的に大きく動いているということもある。
しかし、オプション取引、特に日経225オプションなどの場合は1年先の動きを読んでも意味はない。せいぜい1か月程度の期間である。
いずれにしろ、株価の場合は右に行くか左に行くかとか斜め左方向に動くかなどを考える必要はない。
横軸に時間をとれば確かに斜め上方向に行ったり斜め下方向に行ったりするが、一度動くと一旦リセットし次が上か下かということを繰り返すパーセンテージリターンの考え方からすると横軸時間をとっても実際あまり意味はない。
上方向か下方向か正規分布では確率分布は半々である。実際の騰落率もほぼそれに近い。にも関わらず株価は時間が経過すると前回計測時点よりは移動していることが多い。
これは逆に言えば株価は一旦リセットされないからであり、対数を使ったほうがいいと言われる所以である。
騰落率でボラを算出しているのだから本来は一旦株価をリセット(仕切り直し)するのがスジとなる。
とは言え、毎日あるいは一定の時間ごとにオプションを買い直したり売り直したりするのは手数料や、あるいはスプレッドなどから現実的ではない。
仮に多少の優位性があってもコストが上回ってしまう可能性がある。
確かに最終的に当該権利行使価格にインするかしないかが重要なので最終的な価格がいくらになるのかが出来るだけ予測できることにこしたことはないが、最終価格よりもどれくらい動くのかが本来キモである。
株価がランダムに動くというのは要するにランダムに上下するということであり、その幅もランダムではあるものの、計測時点から移動するにはそのある程度の限界値というものがあり、かつ上か下かにしか動かない。
また、ほとんどの期間でほとんど動かないとも言える。
そのほとんどの期間でどう対応するのか?逆にそれ以外の大きく動く期間でどう対応するのか?
通常はほとんどの期間動かないのだからオプションは売ったほうがいい、という結論に達するはずである。
しかし、オプションの売りは損失が売った金額以上になる危険性がある。
しかもその額はいくらになるか分からない。仮に損をする金額が予め分かり、そしてその損失額よりも売ったプレミアム収入が多いとなるのならば勿論売り続ければいいが、それは分からない。
上か下かの二者択一とは言え、ピンポイントで当てる事も現実的ではない。大数の法則でオプションを買い続けるにしろ売り続けるにしろ、優位性がなければ結果的にはよくて損益ゼロとなる。
現実的に可能な方法は買い続ける、あるいは売り続けるにしろ、損失を出すときの損失の幅を出来るだけ小さくし、利益が出る時にできるだけ多くすることだろうか。
分かりやすいのはオプションを売るときだろう。
オプションを売る場合は利益が限定され損失は無限大に増加する可能性もあるが、適時デルタヘッジをすればその損失を補填することができる。
所謂デルタヘッジをしていることになるが、ここで言うデルタヘッジはデルタヘッジで利益をあげることが目的ではなくあくまで損失出来るだけ小さくすることが目的である。
とは言え、実際はそれほど簡単ではなく、相場は上下にランダムに動いているため、ヘッジを外すことも必要となる。
仮にヘッジを入れたあと、相場が一気に大きく動いてヘッジを外す時、損失を出す場合がある。また、その後ヘッジを入れ直すこともあるかもしれない。ヘッジと逆方向に相場が緩やかに動いた場合、そもそもヘッジを入れる必要はなかったとなるかもしれないし、その時ヘッジに含み損があるかもしれない。
相場が大きく変動しなくても日々の蓄積で、価格が移動した場合、当初建てていたオプションのポジションも離れたり近寄ったりしていることになる。
この時、含み損になったり含み益になったりしているはずである。
そして、次に相場がどちらに動くかは分からない。近くに寄ったオプションがインするかもしれないし、逆に離れてしまうかもしれない。
買っているオプションなら近寄ったほうがいいし、売っているなら離れたほうがよい。
買ったオプションが離れていれば近場に買い直し、売っているオプションが近寄ったら離れた場所に売り直す。
その後、±2σや3σの変動が来るだろう。その時にどううまく対応するか。

オプションの売買においては、一度建てたポジションを軸としてSQまででどうなるかという観点から語られることが多い。言わばポジションを固定して考えがちである。
個々の売買において損失が発生してもSQまでを一つの取引だと考えると結果的にトータルで利益が出ていればよい。何も百発百中で当てる必要はない。
当初のポジションから現在価格に近付けたり話したりインする確率を高めたり低めたりする。

ATMから1000円離れたコールを買っていたとして200円相場が上昇したら200円ずつ上のオプションに買い直す。1000円上昇して終了した場合当初のポジションのままの場合と買い直していった場合でどちらがいいのか悪いのか。

現在地点から常に同じ距離間を持ったポジションを持ち直すと、インする事もない。建て直す時に利益が累積されていく場合もあれば損失が累積される場合もある。
オプション売りの場合は損失が溜まっても最終的にインせずに終了すればプレミアム売却益でトータル利益になる場合もある。
相場がランダムに動き、かつほぼ動きがない場合は結局のところ⊿では稼ぎが少ない。反面、時間的価値は減価していくのでオプション買いの場合は損失となっているはずである。
仮に損失もなければ利益もないとすると、後は相場が大きく動く時に利益をとる必要がでてくる。
このとき、オプション買いは逆方向に行っても損失は限定されるが、オプション売りは逆方向に行くと損失が増大するおそれがある。
相場が想定の範囲内で動くことが多いからといってヘッジなしで売り続けていると稀な大きな変動で損失を被り、積みあげた利益を失ってしまう。
そもそもオプション価格がブラックショールズ式によってIVが現実ボラ通りで算出されたものであれば利益もなければ損失もないが、現実の値動きではテールリスクが想定よりも大きい。
ほとんどの期間で想定内で売り続けて、想定より大きい損失を被るということになる。

値動きはランダムに上下するが、上か下かであり、方向を当てることはできないにせよ、オプションの場合は上方向だけ、或いは下方向だけを考えて取引する事ができる。
コールを買った場合は現在地点より上に興味がある。下に行けば損失とはなるが、購入価格以上の損失は被らない。
コールを売った場合上に行けば行くほど損失が拡大する可能性があるからコールの買い同様下方向よりむしろ上方向に興味がある。
下方向に行く分にはどんどん行って構わないとも言える。
ほとんどの期間で相場が動かないとするとコールの買いの場合は時間的価値が減価していくため、その減価分が少しでも補填できれば結果としてトータルで利益になるということになる。
売りに関してはほとんどの期間で買いとは逆に利益がでるが、大きく上昇した時に損失を少しでも軽減できれば結果的に利益になる。
オプション取引を別の面から見ると、いかに利益を出すかということはいかに損失を抑えるかと言い換える事もできる。
方向性や値幅などを当てることを放棄し、常に買い続け、或いは売り続けて大数の法則で利益を出すには損失を減らすことに注力したほうがいいということになる。

コールの買いの場合は、時間的価値の減価分及び下方向に動いた場合の減価分をどのように補填相殺するのか。完璧な方法が存在すればそれは言わば聖杯と言えるだろうが。
コールの売りの場合は、相場が大きく上方向に動いた時にどれくらい損失が軽減できるのか。しかし、売りの場合はその想定損失が不明である。とは言え、結局インした場合に損失が発生するわけだから、インした場合の損失額より少なくなればいいだけだから実際の損失額がいくらになるかは関係ない。

そう考えるとコールの買いの場合も時間的価値減価分を相殺しようとして必ずしもセータをフラットにする必要はなく、他の部分で補填できればよいが、相場がほとんど動かない場合は⊿を傾けていても意味がない。

そうすると、結局セータをフラットにするためにオプションを売ってセータを補充することになるが、方向性を同じにするためにプットオプションを売ることになる。しかし、プットを売る事により相場が大きく下落した場合のネガティブガンマのリスクが生じるためにそれを低下させるためにデルタヘッジをする必要が出てくる。

オプションは買い続けるか売り続けても損失もなければ利益もない

経済学はある机上の空論とも言うべき前提を条件として理論が構築される場合が多い。
オプション価格が適正に算出されているなら無裁定価格理論により当該オプションを買い続けても、或いは売り続けても利益もでなければ損失もない。これが帰結となる。
とは言え、常に適正価格で取引されているわけではない、むしろ適正価格な時は稀だろう。
しかし、過去の統計データからみればある程度正規分布に近い騰落分布を描く商品であれば適正価格からズレていても投資し続けることにより結局損益はプラマイゼロへと収束していくことになる。
騰落率を合計し平均すれば概ねプラマイゼロ近辺へと収束する商品はオプション価格にズレが生じていても常に高い価格で買うというわけでもなく、高い時もあれば安い時もあり、結局は投資額とリターンがいずれ収束していくだろう。
オプション価格というのは言わばリターンを各機会に割り振って価格付けされているとみてよい。もっともある特定の期間だけを抽出すると損が出ていたり、大きく利益となっていることもあるが。
そのような期間を当てることができればその期間に集中投資すればよい。しかし、それが分かれば、別にオプションに限る必要もない。
価格の方向性や値幅がある程度分かるというならわざわざヘッジなどということを考える必要もない。
価格当てゲームに太刀打ちできない我々は、銅の先物定期売りで財をなしたと言われるロスチャイルドよろしく、その商品の持つ特性やマーケットの構造などから優位性を見つけ出して少しでも期待値をあげたいというわけである。
オプションそれ単体でみると結局のところ投資し続ければし続けるほどプラマイゼロへと収束していく。
見方を変えると、例えばコールの買いは利益無限大ではなく実質的には限定されているということになる。その利益の額はコールの買いの購入費用ということになる。
そうすると、購入費用を何らかの形で補填できれば利益だけが残るということになる。
そして、ほとんどの期間で利益はでない。ほとんどの期間でコールの買いは紙くずとなる。
これをより細かく1日単位でみると、毎日毎日紙屑となるわけではなく、ほとんど動かない日ということになる。
そして、稀に大きく動く日がある。その動き、要するに騰落率は正規分布に近い形となっている。
7割程度の期間で動きが少なく、3割程度の期間で動きが大きい。
買い続けても利益もでず損失もないという意味は3割程度の期間で7割の損失を穴埋めしているということでもある。
7割の期間での損失をできるだけ減らせば必然的に利益が残るということになる。
買い続ける場合、動きが少ない期間が長ければ長いほど減価してしまう。結局はこの損失分をどうするかということに行きつく。
この損失をカバーできれば大きく動いたときは利益がでようがでまいが売却する。そしてまた買い直す。買い直す位置は同じ位置ではなく現在価格と同じ距離の位置となる。
これを機械的に繰り返せばいずれ損益はプラスへと傾いていき利益が蓄積されていく。
損失と言ってもこの場合の損失はオプションの購入費用であり、一回あたりの損失がそれ以上に増えることはない。
例えば毎回100円程度のオプションを購入するとすれば100円の損失が蓄積されるが、これを毎回50円に抑えれば、結果的には50円の利益が蓄積されていくという具合である。逆に100円の購入費用をゼロにしても、毎回100円の利益が蓄積されてそれ以上の額がトータルで蓄積されることはない。
ピンポイントで相場の暴騰や暴落を当てることができ、オプション価格が10倍や20倍になって利益があげることができるならそうすればよいのであって、わざわざオプションの価格付け理論がどうのこうの、あるいは⊿がどうのこうの考える必要もない。
買い続けるあるいは売り続けるという事を前提にすると、ヘッジなどがない場合は試行回数が多ければ多いほどオプションは儲からない。
これには相場の方向性などは関係なく、トレーダーの上手い下手も関係ない。これがオプションというものの特性、ブラックショールズ式で計算されたオプションなのだ。
つまり期待値がゼロになるように価格をつけようとするものがブラックショールズ式であると言える。
従って、儲かるには試行回数を少なくし、当たった時の利益を大きくする必要があるがそれが出来れば誰も苦労はしないよいう話である。
そうなると、人はほとんどの期間で儲かるオプション売りにたどり着くことになる。
売る位置によっては儲かる確率はもっと上がるに違いないが、いずれ損する時が必ずくる。試行回数が多ければ多いほどそうなるが、人はその時にうまく損切りできればいいと考える。
しかし、うまく損切りしたと思った時に相場が戻ってしまうと実は無駄な損切りだったとなることもある。また、損切りできても異常に高いIVであればそれも実は無駄なコストだったとなりかねない。

また、相場が大きく変動すれば証拠金の増大なども招く。そうすると、損切りしなくてもいい場面で損切りを余儀なくされたりする。
そもそも、局所的に大損しているように見えても売りの場合も買いと同じように売り続ければトータルプラマイゼロへと収束していくのだから実は損切りする必要性が薄いとも言える。うまい具合に損切りするという意味が損失を減らして利益を増やすという意味なら確かに買いでの損失軽減と同じ意味合いになるが、うまく損切りできるならそれでいい話である。

いずれにしろ、オプションにヘッジなしで投資をし続けるということはいずれリターンがプラマイゼロへと収束することを意味する。
リターンをプラスにするには勝ち逃げするか、損失を軽減させる必要がある。
100万儲かって勝ち逃げする人はいないだろう。では1000万か、1億なのか?
相場の方向性が読めるというのならそもそも勝ち逃げする必要もない。