日経平均のボラティリティとIVでオプションを買うとデルタヘッジがわかってくる

IVは市場が予想している変動率である

2020/4/10日の日経平均のSQは19,577.48(速報値)
前回3月のSQ値は17,052.89
2524.59円上昇
騰落率は+14.8%

実際の日経平均の標準偏差

3/12日終値から4/10日SQ値までの日々の騰落率の偏差 3.53%

228日換算にしたボラティリティ 53.3%

当該営業日数19日間に換算したボラ15.3%
日経平均VI指数

2020/3/13 51.1
2020/3/16 60.67
2020/3/17 56.63
2020/3/18 56.12
2020/3/19 58.45
2020/3/23 54.47
2020/3/24 45.49
2020/3/25 48.28
2020/3/26 54.18
2020/3/27 52.78
2020/3/30 55.79
2020/3/31 49.94
2020/4/1 50.28
2020/4/2 47.78
2020/4/3 45.97
2020/4/6 41.18
2020/4/7 40.11
2020/4/8 42.45
2020/4/9 40.45

 

日経平均VI指数https://indexes.nikkei.co.jp/nkave/index/profile?idx=nk225vi

算出方法 大阪取引所に上場している日経平均先物および日経平均オプションの価格をもとに算出します。直近二限月のオプションのうち、直近限月の先物価格を基準としてOTM(アウト・オブ・ザ・マネー)となる行使価格のオプション価格をつかって、それぞれの限月のボラティリティーを求め、満期が30日になるように線形補間を行います。

日経平均のボラは結果から算出しているものであるが、日経平均VI指数に使われるオプション価格のIVは予想ボラティリティである。

予想が常にあたるわけではないが(むしろ当たらないほうが多いだろう)3/13日のVI指数が丁度50%程度であることが興味深い。

いずれにしろ4/9のVI指数は概ね1か月後の予想ボラティリティということになる。

これは年率換算されているので(恐らく365日換算)日々の偏差になおすと約2.1%程度を想定しているものと思われる。

日々の偏差が2.1%だとすると1か月のボラティリティは11.5%程度となり、±11.5%程度動く可能性が70%程度はあるだろう、あるいはおかしくないと市場は見ていると言う事になる。11.5%ということは4/9日終値ベースで2200円ほどである。

ということは1か月後は上21500円、下は17000円でもおかしくないというまるで世渡りの上手なアナリストのような無難な予想となった。

他方約13%程度の確率で23000円、あるいは15000円になる可能性があると正規分布では言うらしい。

13%程度と言えば結構な確率である。

そこで現在22000円程度のコールオプションがいくらかみてみよう。

現在のIVから予測騰落を算出する

すでにコールのIVは20台になっているので上記のVI指数よりもかなり低くなっている。

従ってこのオプションは日経VI指数を基準にすれば安いオプションであり買いとなるがVI指数はプットも一緒に計算するのでコールのIVよりVI指数のほうが高くなるのは当然ということになる。従ってVI指数よりコールのIVが低いから買いであるなどと飛びつくとバカをみるかもしれない。

年率換算IVを仮に27とすると、日々の偏差は1.41となり、次のSQまでの換算ボラティリティは(28日)7.46%程度となる。要するに±7.5%程度上下の確率が約70%程度とみこむ。
ちなみに直近250日の日経平均の実際の標準偏差は丁度1.4程度であるから、おそらくこの値のほうが信頼性が高い。

従って市場は±1450円程度動く可能性70%程度を見込んでいるらしい。となると上は約21000円、下は18000円となる。

 

ということは10%ほどの確率で22000円以上になる可能性があるということでもある。

IVから予想価格を算出してその価格でのオプション価格を予想してみる

そこで22000円のコールをみると28円で取引されている。さて、もしSQ時に日経平均が22000円に到達してもこのオプションは価値がなくなってしまう。幸い22500円までいく可能性が10%ほどあるので仮に22300円まで到達すると仮定するとこのオプションは丁度10倍の300円ほどになる。

当該オプションを買った場合ケリー基準で言うエッジがあるか計算する

とはいえ、ケリー基準的に言えば的中率10%のギャンブルでリターンが10倍(9倍)だと賭ける価値はあるのだろうか?

https://www.pinnacle.com/ja/betting-articles/Betting-Strategy/How-to-use-kelly-criterion-for-betting/2BT2LK6K2QWQ7QJ8

長い目で見ればこのギャンブルは賭ける価値がないようだ。もっともオプションは何が起こるか分からない。

オプション売買の多様な戦略を利用して勝率を高める

22300円以上になる可能性は充分あるし、途中で勝負を降りることもできる。その場合はゼロサムゲームとはならないし、また
22300円以上にならなくてもオプションを購入してすぐにそれに近い価格まで上昇すれば充分なリターンを得ることもできる。
仮に5日後に1000円上昇した場合、IVを同じで計算すると 110円という結果になった。

また、おなじコストを別の戦略で投下することもできる。
例えば権利行使価格20625円のコールを205円で買い、権利行使価格20750円のコールを175円で売る。この場合実質コストは30円であり22000円のコールを28円で買うのととコストはほぼ変わらない。
とは言え、このスプレッドは最大利益は125ー30で95円となる。確率的に言えば35%程度の確率で19500~21000になる。これをケリー基準にあてはめればエッジがある結果となった。

1日ごとにやってみるとどうなるか

日々の予想偏差が1.41なので1日あたり約275円上昇する確率は約35%弱、550円上昇する確率は13%弱ということになる。
権利行使価格21000円のコールを例にとる。IV27程度で計算すると128円。
a.翌日日経平均が19650円になるとIVがほぼ同じだとしたら150円前後になる。+22円
b.日経平均が19850円だと190円前後+62円
c.逆に19150円まで下落すると70円前後-58円
d.19350円だと100円前後-28円

期待値で換算IV同値3σ除外
a.+8円
b.+8円
c.-8円
d.-10円
確率的には同じだが前日購入した場合セータ分劣化するためエッジがない結果となった。
とは言え、デルタヘッジ戦略でも言えることだが結局実現ボラティリティがIVより高くなる場合にオプションの買いで利益がでるわけだから要は当日のIVが購入時のIVより高くなれば利益がでる可能性が高くなることになる。
いずれにしても単純に確率とリターンだけでオプションを買い続けるのではじり貧になることが分かる。

デルタヘッジを組み合わせるとどうなるか

では実際デルタヘッジをしてみると収益に影響はあるだろうか。
上記の21000円のコールのデルタは0.17なのでミニ先を1.7枚売ってデルタをヘッジすることになる(実際は不可能だが便宜上そうしてみる)。
ミニ先の損益期待値 ※1日で終了する勝負なのでデルタ調整は行わない
a.-255 -89
b.-595 -77
c.+595 +77
d.+255 +89

ミニ先の売買単位は100なので期待値を100倍

オプションは1000倍すると結果ほぼ相殺される
デルタヘッジを行うと相場が下落したときの損失を相殺してくれるのは当然として、目論見通り上昇した場合でも利益を相殺され結果として損失も利益もないこととなる。IVに変化がない場合本来デルタヘッジはこのような挙動を示す。
一般に言われているデルタヘッジで利益をあげる戦略ではこの点を見逃しているものが多い。
IVがもし上昇していれば必然的にオプション価格は上がっているわけで、そうであればトータル損益はプラスとなる。

仮に一気に1000円上昇したと仮定するとミニ先の損失は17万円。コールはIVが同じだとすると400円弱となり26万前後の利益。トータル10万前後の利益となる。

ちなみにコールのデルタは0.38に増大しているため、通常のデルタヘッジを行っていればデルタ調整のため日経平均が上昇している最中にミニ先の売りを追加しているはずである。その結果これだけの利益は出ないはずである。

オプションの買いはIVを買っているのと同義である

以上みてきたようにオプションの買いを確率的に行って利益をあげようとする場合は端的に予想ボラティリティより実現ボラティリティが高いという条件が必要になる。
平たく言えばIVが低いときに買って高い時に売る。
勿論、相場の上下をあてることによりIV関係なく利益をあげることもできるだろうが、それができればすでに大金持ちだろう。
とは言え、オプションの難しさは例えIVが上がる事を予想してそれを的中させたとしても必ず利益がでるとは限らない点にある。
IVが低いと思いコールを買ったものの相場が暴落してIVが急騰してもコールの価格は下落しているに違いない。
そこで、デルタヘッジなどが使われるというわけである。

IVではなく統計上の確率を基準としてみる

いずれにせよオプション売買はIVに大きく影響されてしまうものであり、実現ボラティリティをある程度正確に予測できなければ継続的に利益をあげていくのは難しい。
とは言え、これはオプション取引をデルタヘッジあるいはスプレッド売買などのオプション特有の売買手法で行う場合の話である。
端的に相場が上がると思えばコールを買うかプットを売り、実際相場が予想通り上昇すればIVが多少動こうが利益になる。もっともそれができれば苦労はないという話である。
そこでIVではなく実際の日経平均のデータから確率をとって予想リターンを出してそのオプションにエッジがあるかどうか判断する方法が考えられる。

移動平均以上以下での騰落率

例えば日経平均が移動平均以上の場合の平均騰落率や最大上昇率の平均値などをとってその確率を基準とする方法があげられる。
移動平均以下に転換した場合の最安騰落平均が-3.8%
このときの偏差が5.78%というデータがある
この場合-5.78%~-11.56%の確率が約12%ほどなのでプットを買った場合8倍以上のリターンがあれば長い目で見れば買いとなる。
言い換えるとこのような条件下にあれば買い、目標値に到達したら売却していけば回収率がプラスになっていくはずである。
権利行使価格18000円のプットをみてみよう。400円で取引されIV47程度である。
仮に5日後日経平均が10%の下落17500円になったとしたら、IV同一だとオプション価格は1100円ほどにしかならない。要するにこのプットは高すぎる。
では15000円のプットはどうだろうか。95円でIV64程度である。それが5日後230円程度になる。
いずれにしてもこれまでの日経平均の統計上の確率からすると既にオプション価格の計算の確率、要するにIVが高く見積もられているということになり、長い目で考えると買わない方がいいということになる。的中すれば勿論問題ないが的中しなかった場合割高なオプションを買わされたことになる、結果このような割高なオプションばかり買っているとトータルで利益がでない。
これは逆に言えばデルタヘッジ戦略でプットを売った方が利益になる確率が高いことを物語っている。
仮にIVを低くして計算してみよう。15000円のプットのIVを40で計算すると5円ほどになる。IV同一で5日後日経平均が17500円だとプットの価格は40円を超えて買いとなる。