標準偏差ボラティリティが分かるとオプションが見えてくる

2021年8月14日

追記
ボラティリティ計算方法概要
日々の終値ベースの場合 エクセル使用

〇前日比の騰落率を出す
〇騰落率をSTDEV関数で計算する。(STDEV.PとかSなどがあるがあまり気にしなくてもいい)
上記で算出されるのは計算対象期間の日々のボラティリティになるので年率換算されていない素のボラティリティ。
注意が必要なのは年率換算である。
通常ボラティリティと言うと年率換算されている。年率換算というのは365日に換算するということである。株式市場は年間250日前後である。
仮に1年間250営業日の日々のボラティリティを求めた場合年率換算すると
365日換算 365を√する 大体19.1程度なので 日々のボラティリティを19.1倍すると年率換算となる。正確には365日換算と言えるかもしれない。
250日を年率換算 250を√した15.8程度を素のボラに乗じてやる

計算対象期間が1か月(日々ではなく1か月ごとの騰落率)を年率換算するには
30日を1か月として12を√して、これに1か月ボラを乗じてやる

年率に換算するということは日々のボラティリティから1年後の変動率を算出するということになる。
そしてあくまで正規分布するという前提であるから、仮にボラが20%だとしても20%上昇するというわけではなく、正規分布で言えば0~20%上昇する確率が34.1%、0~-20%下落する確率も同様に34.1%程度ということになる。
上下20%、要するに現在価格から上下幅40%変動する確率が7割弱ということになる。逆に言えばそれ以上動く確率は3割程度しかないとも言える。

計算対象期間や年率換算の基準をどれにするかなどで大きく変わってくるので注意が必要になってくる。

IV=インプライドボラティリティとボラティリティ(ヒストリカルボラティリティ)の違い

IVはオプションの価格計算に使われる予測ボラティリティと一般的に言われている。

ボラティリティはオプションの原資産の標準偏差になる。この場合過去のデータからとってくるのでヒストリカルボラティリティと言われる。

オプション価格の計算にボラティリティが使われるが、この時任意のボラティリティが使われる。オプションは満期があってそれは将来訪れるものであり、原資産の将来価格がいくらになるかで現在のオプション価格を計算する。その将来価格の予測にボラティリティが使われるため予測ボラティリティと言われる。

IVとボラティリティの値は一致する事のほうが稀だろう。ある意味違いが出て当たり前だからである。IVは30日後の予測ボラティリティなどとも言われるが、これは正確ではない。より正確に言えば当該オプションの満期までの原資産のボラティリティを予測していると言ったほうがいい。

また、IVはオプション価格から逆算されているなどとも言われるがこれも正確ではない。確かに結果としてそうなっている面も否定できないが、まずオプション価格があってそれにIVを調整して合わせるのは本末転倒だからであり、個人零細投資家ではそうせざるを得ない部分もあるがマーケットメイカーは何らかの根拠をもって値付けをしている。そしてその価格と言うのは一定のIVで落ち着くのだからそれなりに根拠のあるものなのだろう。

IVが高いとか低いとか、その判断の基準は一体なんであろうか?最終的に原資産でオプションは清算されるから原資産に対してだろうか?それともオプション自体の過去のIVと比較してなのだろうか。

仮にあなたの考えるIVより市場のIVが低ければ低い方のIVを買い、デルタヘッジすれば儲けられる。ただし、あなたの考えるそのIVとやらが正しければ。

ボラティリティは標準偏差

標準偏差は偏差値にも使われている
平均値をだし、そこから各サンプルがどれだけ離れているかばらつきをみるものと説明される

金融の世界でなぜボラティリティが重要視されるのか

今日の株価が分かっても明日の株価は分からない。つまり今日の株価と明日の株価に関連性がないからである。
関連性がなければ予測はつかない。こういうことを自己相関がないとか定常性がないなどというらしい。
いずれにしろ予測をする方法が必要であるが、ボラティリティは自己相関がある。上がれば下がる回帰性もある。
ボラティリティの計算に使われるのはリターン、騰落率である。騰落率自体は自己相関がないものの、これを二乗にすると相関性がでてくる。リターンの絶対値でも相関がでてくる。
標準偏差の計算方法には二乗が使われている。

ボラティリティ計算方法

①平均値を求める
②偏差を求める:各サンプルの値から平均値を引いて、それを2乗する
③分散を求める:偏差の2乗の合計をサンプルの個数で割る
④分散の正の平方根を求める
エクセルの関数で簡単に算出できるものの、計算方法を理解しておくとボラティリティの性質が見えてきて何かと有用である

騰落率変動率で計算する

価格自体で計算すると動きが激しすぎるし、数十年前の株価と現在では桁も違うのでリターン、騰落率での計算をもとにする
対数で計算するとより正確な値が得られる
対数もエクセルの関数で簡単に計算できる

ボラティリティは年率で表示されている

通常のボラティリティは年率で表示されている。日々の終値の対数をとり、それを365の平方根で乗じてやる。とはいえ、株価の場合は年間の営業日数で計算したほうがより正確ではある。その場合は営業日数の平方根を乗じることになる。1か月換算なら30の平方根などとする。

ボラティリティ=標準偏差は平均からどれくらい開きがあるかをみる

平均の値から各値がどれだけ離れているか、ばらついているかを見ると言われるが実際の計算方法をみると
各値(サンプル)から平均値を引く=偏差が算出される
偏差の2乗の合計をデータの個数で割る
という工程があることからどれくらいバラついているかというより、平均値からどれくらいの開きがあるかをみているといえる

正規分布の利用

正規分布とは統計上の結果が以下のような形状のグラフを描くことをいう

このような形状のグラフを描く統計結果をもつものが世の中にはかなり多いことから正規分布の結果はかなり信頼性が高い
違う形状を描く場合は正規分布ではないがそれは以下の正規分布の確率を使えないというだけの話である
株価は正規分布通りにはならない
しかし、ここで使うボラティリティは株価そのものではなくリターン、騰落率である。とはいえ、ボラティリティであっても正規分布に似た形状ではあるものの違った確率パターンとなる

正規分布によれば
平均値から+-標準偏差1個分の範囲内に収まる確率は68.27%
+-2個分の範囲内は95.45%
+-3個分の範囲内は99.73%

になると言われている

正規分布は将来の株価を予測するものではない

1000円の株価が年率20%のボラティリティだとすると、1年後は約70%の確率で1200円から800円に収まるなどと説明される。
しかし、株価のボラティリティは日々変動しているため、仮に1年後の株価が1500円になっていた場合、1年前のボラティリティで判断すると標準偏差+2~+3の範囲内ということになり確率的には4%程度しかない稀なケースとなるものの、
1年後のボラティリティが仮に30%まで上昇していた場合、この時のボラティリティで計算すれば27%の確率ということになる。

大学入試などで使われる偏差値ではその時点で全受験者の中での相対的な位置が分かり、その時点での合格確率に使えるが、その受験者がどれくらい学力が伸びるか分からない
株価で使われるボラティリティは価格そのものではなく変動率であり現時点での株価が高いか安いかの相対的な位置を知ることはできない
変動率が大きいのか小さいのかは分かる
テストの場合はそのボラティリティから同じような条件であればある程度の予測はできるものの、株価の場合は変動率そのものの予測を建てていることになり、また現在の株価を基準にしてそのボラティリティでの予測をたてていることになる

現在のボラティリティで現在の株価を基準にした予測に意味はあるのか

テストの標準偏差で言えば仮に全員同じ受験者が受験したとしても受験日が変わり問題が変わるとボラティリティが変わってくる可能性がある
とはいえ同じような問題で前回の受験日からそう日にちがたっていない場合はボラティリティが急変する可能性が低いともいえる

サンプル数が少ないと正確性に欠ける

この点株価の場合はサンプルが対象期間の価格になるので、テストでいえば受験者が常に変化しているともいえる
サンプル数が少ないと、少ない期間同士で比較した場合にボラティリティが急変している場合がある
ボリンジャーバンドも標準偏差が用いられているがボリンジャーバンドで使われるサンプル数は一般的に20である
サンプル数が少なすぎる為かボリンジャーバンドでは+-2σや+-3σにあることが多いので正規分布とは別の見方が必要である

日、月、年でのボラティリティとは

また、日ごとの終値でボラティリティを算出する場合はサンプルを100でとっても500でとっても日ごとのボラティリティが算出される
一般的に株やFXなどで表示されているボラティリティはこれを年率換算しているものである
株式市場は土日祝は休みなので概ね245日前後に換算されている
月ごとのボラティリティを出すには月の終値を比較し、年毎のボラティリティを出すなら年ごとに算出するのが基本であるが、1年後の株価予測に日ごとのボラティリティを年率換算している場合が多い

正規分布で株価を予測するには平均変動率も考慮しなければならない

そもそも正規分布では平均値に標準偏差を+-するが、そうなると本来は変動率の平均値も出す必要があるものの一般的なボラティリティによる株価予測では平均変動率が考慮されることはない
日々のボラティリティを年率換算する場合であれば当該サンプルの平均値を考慮にいれる必要があることになる
とはいうものの、実際統計でみると変動率の日々平均が0.0何%の場合も多い

サンプル数が多いか少ないかでボラティリティは変わる

いずれにせよサンプル対象期間の長短によりボラティリティが変わる場合があるということは重要である
過去30日と過去250日で明らかに違う場合もあればあまり変わらない場合もある

ボラティリティは上昇し続けない

ボラティリティの計算方法を見ても分かるようにボラティリティが無限に上昇し続ける事はない
勿論、上昇したまま高い状態を長期間維持したり低ボラティリティが長期間続くといったことはあるものの回帰性があるのは否定しようのない事実である
とはいえ、日々のボラティリティのサンプルを長期にすると動きはゆるやかになる

各値から平均を引きその平均にする

株価の場合は上限値がないので変動幅がどんどん大きくなっていけばボラティリティも上昇し続けるように見えるが実際はそうなならない
偏差の平均もとっているからである
その意味で上昇したボラティリティはいずれ下がるという常識は経験則上だけの話ではない
いわゆる回帰性があるということになる
この点からボリンジャーバンドでは例えば+2σを超えたら買われ過ぎなどと言われるが(ボラティリティが上がっているからじきに下がる)、バンドはボラティリティではあるものの株価自体の位置が表示されているのでそうはならない。バンドが広がったがじきに狭くなるだろうとはいえる。バンドが狭くなり始めると、株価が停滞していてもバンドのチャートで見ると高い位置に留まっていることになるがその株価が高いのか安いのかはよく分からない

ボラティリティとは不安定さである

上昇相場ではボラティリティは上昇しない

また、ボラティリティが上昇している時は相場が下落している時に多い事はよく知られている
反対に上昇相場はボラティリティが低下する
ボラティリティは平均値からどれくらい各値が離れているかで判断されるので、上昇相場の場合は比較的騰落率に大きな変化がないからと言える

下落相場の場合は下落幅が大きいからというよりは大きく反発することもありその意味で文字通り不安定な相場だからだろう

上昇相場は安定、下落相場は不安定

ボラティリティについての誤解

下落相場のほうがボラが高くなる、というのはあくまでそういう傾向があるということであり、必ずしもそうはならない。

あるボラティリティから変動率を想定する場合、期間が長くなれば当然想定変動率は大きくなる。

例えば1日のボラが1%だとする。このボラで4日後の想定変動率は2%と巷では言われる。

正確には正規分布に従うと1σが2%になり、0から+2%までの確率が34%程度ということであり、2%上昇する、というわけではない。

逆に言えば、4日間たって結局始値に戻りまったく動かない場合であっても当該ボラはボラである。

つまりボラが高いから相場が下落して終わった、とはならない点に注意が必要だということである。

例えば2020年の日経平均は年初から20%弱上昇して終わったものの365日年率換算のボラ31%程度(1990~2018上昇年平均24.6)と比較的高い。

Posted by kyoufusisuu